日本泌尿器科学会雑誌
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前立腺肥大症における組織構成成分と交感神経α遮断剤の効果
坂井 誠一島崎 淳
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1996 年 87 巻 3 号 p. 695-701

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抄録

(背景と目的) 前立腺肥大症における組織構成成分と排尿障害の重症度との関係, および組織構成成分と交感神経α遮断剤の効果との関係を検討した.
(対象と方法) 1993年9月から1995年1月までの17ヵ月間に受診した前立腺肥大症患者40名 (年齢61~84歳, 平均71.9歳) を対象とした. 組織構成成分は, 経尿道的前立腺切除術のホルマリン固定パラフィン薄切標本に前立腺特異抗原・アクチン二重染色を加えた顕微鏡像から面積比率を求めた.
(結果) smooth muscle (SM) が平均32.7% (5.1~61.0)・connective tissue (CT) が46.9% (19.6~68.6)・glandular epithelium (GE) が10.8% (2.5~26.7)・glandular lumen (GL) が9.6% (0.6~26.6) であった. 切除前立腺重量は平均25.2g (5~96) であった. 塩酸タムスロシン0.2mg/dayの4~8週間, 平均6.0週間の投与の前後で, 自覚症状スコアは19.0から11.0点に, 最大尿流率は6.7から8.8ml/sに, 残尿量は77から46mlに改善した.
SM・CT・GE・GLおよび切除前立腺重量は, 前立腺肥大症による排尿障害の重症度と相関しなかった. SMと最大尿流率の変化とが相関係数0.61であり, 交感神経α遮断剤の治療効果と関連する組織学的因子として, 肥大結節の平滑筋の面積比率が考えられた.すなわち, 平滑筋の割合が多いほど交感神経α遮断剤の効果が良かった. また, 大きな前立腺肥大症ほど平滑筋の割合が減り, 交感神経α遮断剤の効果が悪かった.
(結論) 前立腺肥大症において交感神経α遮断剤の臨床効果は肥大結節の平滑筋の面積比率との相関が認められた.

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