日本泌尿器科学会雑誌
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女性尿道における静的及び腹圧下尿道内圧測定値の測定方向による差の検討
増田 均山田 拓己永松 秀樹長浜 克志川上 理渡辺 徹根岸 壮治森田 隆
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1997 年 88 巻 1 号 p. 40-45

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抄録

(目的) 我々は, 尿禁制女性と腹圧性尿失禁女性で測定した静的及び腹圧下尿道内圧測定値の尿道壁の測定方向による差を比較し, 尿禁制メカニズムの検討を行なった. また, 膀胱頸部吊り上げ術の前後で同様の検討を行い手術のメカニズムを検討した.
(対象と方法) 21名の尿禁制者 (正常群), 38名の尿失禁患者 (尿失禁群) で, 2個のトランスヂューサーを用いた尿道内圧測定を, 圧センサーを尿道の前方, 側方, 後方の各方向に向けて施行し, MUCP, FUL, 圧伝達率 (PTR) を測定した. 各群内での方向間の比較及び各方向別に正常群と尿失禁群の比較検討を行なった. また, 尿失禁群のうち手術で治癒した19名 (手術群) で, 術前後に同様の測定をし比較検討した.
(結果) 全群で, MUCPは尿道の前方で最も高値で, FULには方向差は認めなかった. 全方向で, MUCP, FULは正常群が尿失禁群に比して高値で, また術前後では有意差は認めなかった. PTRは, 正常群では方向による有意差は認めず, 尿失禁群では後方, 側方のそれが前方に比し有意に低かった. また, 尿失禁群の側方及び後方のPTRは, 正常群のそれより有意に低かった. 術後には, 尿道の側方と後方のPTRが, 前方のそれに近似していた.
(結論) 腹圧性尿失禁患者では, 後方の尿道支持装置が破綻している事が示唆され, 膀胱頸部吊り上げ術は, 破綻した支持装置の代用物を提供し, 尿禁制を獲得させていると言えよう.

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