日本泌尿器科学会雑誌
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進行性尿路上皮癌に対するIFEP化学療法
その治療成績ならびに効果判定における腫瘍マーカー測定の有用性の検討
前澤 卓也米瀬 淳二塚本 哲郎石井 信行福井 巖
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2002 年 93 巻 7 号 p. 727-735

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抄録

(目的) 進行性尿路上皮癌 (N2-3, M1) 症例に対するIFEP療法 (ifosfamide: IFM, etoposide: ETP, cisplatin: CDDP, 5-fluorouracil: 5-FU) の治療効果ならびに効果判定における腫瘍マーカーの意義について検討した.
(対象と方法) 1994年3月から2000年5月までの6年間に来院した進行性尿路上皮癌 (N2-3, M1) 41症例を対象とした. 薬剤はIFM (2g/m2), 5-FU (750mg/m2), ETP (100mg/m2), CDDP (20mg/m2), をそれぞれ連続3日間投与し, 原則として3週毎に繰り返した. また, 化学療法施行前に, 血中CEA, CA19-9, SCCを測定し, 高値例ではその後の推移も測定し, 化学療法による治療効果と比較検討した.
(結果) IFEP療法の奏効率 (CR+PR) は53.7%で, 生存期間の中央値は10.8ヵ月, 奏効例の効果持続期間は7.5ヵ月であった. 1年, 3年累積生存率はそれぞれ59.3%, 16.5%で, 臓器別の奏効率は, 局所病変が54%, リンパ節57%, 骨56%, 肺50%, 肝40%であった. 副作用は骨髄抑制が高度であったが, 口内炎は稀であった. 上記腫瘍マーカー全てを測定した37例の内, 治療前に何れかの腫瘍マーカーが異常高値を示した症例は19症例 (51%) であり, その内訳は, CEAが7例 (19%), CA19-9が13例 (35%), SCCが10例 (27%) であった. 治療前の腫瘍マーカー上昇の有無と, 原発巣の部位, 転移の広がり及び, 患者の生存期間との間に有意な関連を認めなかった. しかし, 腫瘍マーカー, 特にCEAとCA19-9の減衰は画像上の治療効果と有意に関連し (p<0.05), 治療効果判定としての意義が認められた.
(結論) IFEP療法は進行性尿路上皮癌の治療として有用であり, その効果判定に腫瘍マーカーが一助となり得ると思われた.

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