日本泌尿器科学会雑誌
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膀胱癌におけるELISA法による thymidine phosphorylase の検討
三枝 道尚高尾 彰眞鍋 大輔市川 孝治荒巻 謙二中山 恭樹山田 大介
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キーワード: 膀胱癌
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2002 年 93 巻 7 号 p. 743-749

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抄録

(目的) 消化器癌においては血管新生因子の一つである thymidine phosphorylase (TP) の発現と癌の悪性度, さらには予後と相関するとの報告がある. そこで膀胱癌において組織中TP値を検討した.
(対象と方法) 経尿道的手術を施行した初発膀胱癌66例の腫瘍, 正常組織中TP値をELISA法にて測定し, 臨床的・病理学的因子との関連性を検討した. 統計学的分析には Mann-Whitney のU検定を用いた.
(結果) TP値は正常部位に比し腫瘍部位で有意に高値であった (P<0.0001). 腫瘍組織中TP値については, Grade ではG1-G3の間 (P=0.0099), 深達度ではTa-T2以上 (P=0.0059), 表在癌 (Ta+T1) と浸潤癌 (T2以上) との間 (P=0.0157), 表面性状, 腫瘍形態では乳頭状と非乳頭状 (P=0.0056), 有茎性と広基性との間 (P=0.0458), 大きさでは1cm以下と3cm以上との間 (P=0.0267) において, それぞれ後者が有意に高値であった. 正常組織中のTP値については, 広基性腫瘍を有する場合に有茎性腫瘍を有する場合より有意に高値を示した (P=0.0078).
(結論) 腫瘍組織中TP値は悪性度と相関しており, 予後因子として期待される. また正常組織中のTP値も広基性腫瘍を有する場合に高値を示したが, この意義については今後の症例の集積, 予後の追跡結果によって明らかになることを期待する.

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