日本泌尿器科学会雑誌
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群馬県館林市前立腺癌検診について
2003年度から2005年度の3年間のPSA単独検診結果
中村 敏之悦永 徹佐々木 靖新田 貴士奥木 宏延岡崎 浩加藤 宣雄山本 巧鈴木 和浩
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キーワード: 検診, 前立腺癌, PSA
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2007 年 98 巻 4 号 p. 619-628

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抄録

(目的) 2003年度より基本健康診査にPSA (前立腺特異抗原) 単独検診による前立腺癌検診を組み込んで行ったので, その3年間の結果について検討した.
(対象と方法) 50歳以上の基本健康診査を受ける男性のうち希望者を前立腺癌検診の対象とし, PSA単独検診にて, 集団検診および市内各医療機関での個別検診の2本立てで行った. 年齢階層別PSAを用いた. また一次検診時に検診結果の解析の同意を文書にて得た.
(結果) 2003年度の館林市の50歳以上の男性は15,303名であった. PSA検診を受けたのは, 2003年度, 2004年度, 2005年度各々11.8%, 12.2%, 12.7%でありこの3年のPSA暴露率は20.6%であった. 要2次検診受診者は各々208名, 165名, 179名であり, 2次検診受診率は各々80.3%, 61.2%, 55.3%であった. 2次検診受診者のうち前立腺生検を各々123名 (73.2%), 54名 (53.5%), 38名 (38.4%), に施行し, 前立腺癌患者を各々60名, 28名, 16名見いだした. これは1次検診者の各々3.4%, 1.5%, 0.8%, 3年間では1.85%であり, 初回検診を受けた人に限ると3.2%であった. 病期診断を行った101名の臨床病期は Stage B 86名 (85.1%), Stage C 9名 (8.9%), Stage D 6名 (5.9%) だった. この101名の治療としては内分泌療法が46名 (45.5%), 根治的前立腺全摘除術が31名 (30.7%), 外照射が5名 (5.0%), 無治療経過観察が6名 (5.9%), 他院での加療希望が7名 (6.3%), 加療拒否が6名 (5.9%) であった.
(結論) 3年間で一次検診者の1.85%に前立腺癌が発見された. 病期診断を行った101名のうち85.1%が stage Bであり, 前立腺癌の早期加療につながった. このことが将来的な死亡率の低下につながることを期待している.

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