視覚神経系を研究するときに,どのようなモデルに基づき,どのような視覚刺激を使うか,というのは視覚科学の中心課題の一つである。視覚刺激には,バー刺激,サイン波刺激,ランダムドット刺激,テクスチャー刺激,色刺激,運動刺激,文字刺激などがある。これらの刺激に共通する情報要素はなんだろうか?どのような情報理論に基づきこういった視覚情報を記述できるであろうか。その答えは,歴史的にはガボール変換とその応用に見い出された。この論文ではこうした経緯をレビューする。まずガボール変換を数学的に定義した後,こうした変換が実現する視覚的要素(方向,空間周波数,位置など)で構成されたガボール視覚刺激を定義する。更に,こうしたガボール刺激の神経科学における役割を論じ,最後に視覚科学における応用手法について解説する。