2013 年 34 巻 1 号 p. 3-9
両眼視の働きについて病理学的な視点から考えるため,両眼視の異常を来す眼疾患やその診断法や治療法について解説した。斜視や眼球運動制限が起こると複視が生じ,両眼視差に基づく奥行感覚が得られなくなる。抑制や網膜対応異常などの感覚的適応力によって複視は時間とともに解消するが,その場合も両眼視は回復しない。斜視手術により眼位ずれを矯正することで,両眼視の回復が期待できる。しかし,立体視発達の臨界期である乳児期を両眼視の経験なしに過ごした先天性斜視症例では,後日眼位ずれが矯正されても,高いレベルの立体視の回復は困難である。