2026 年 37 巻 1 号 p. 60-67
抗MAG抗体関連ニューロパチーは,IgM M蛋白を背景に遠位・感覚優位に緩徐進行する脱髄性ニューロパチーである。病原性IgMの主要な標的は,MAG蛋白骨格そのものというよりも,MAGなどに共有される硫酸化糖鎖エピトープHNK-1である可能性が高く,非コンパクト髄鞘領域への結合を契機として補体,主として古典経路が活性化し,C3沈着や終末補体形成を介して widely spaced myelin (WSM) にいたる機序が想定されている。診断では抗MAG ELISAが用いられるが,測定法の差やカットオフにより臨床像と一致しない例があり,真の標的であるHNK-1反応性 (抗HNK1抗体) を測定するほうが病態に整合的で,重症度との関連が示唆される報告もある。加えて,合成HNK-1抗原は供給安定性と標準化の面で有利で,層別化にも資する可能性がある。標準治療は確立されておらず,一般的な免疫療法は効きにくい。リツキシマブはRCTで主要評価項目は未達だが有効例があり,近年はBTK阻害薬での改善報告もある。抗原特異的治療として糖鎖ポリマーは前臨床で概念実証されたが,早期試験は中止され結果は未公表である。補体阻害も理論的には有望だが,現時点では臨床検証が乏しく,今後は機能評価に基づく層別化が前提となる。