2001 年 5 巻 2 号 p. 17-21
本研究の目的は、尿失禁患者67名を対象に質問票を基に尿失禁状態がもたらす強い不満の要因とQOLへの影響を明らかにすることである。分析対象は、64名であった。切迫性尿失禁の群と腹圧性尿失禁の群との比較で、QOLへの影響は、健康観を除いて両群の間に有意差はみられなかった。KHQにおけるQOLへの影響において、切迫性尿失禁の群は、精神面を中心に不満を抱えており、腹圧性尿失禁の群は、精神面及びパッドの交換等の煩わしさや社会活動の制限への影響に不満を募らせていた。不満の要因は、切迫性尿失禁の群では、尿失禁や排尿の頻度で、腹圧性尿失禁の群では、尿失禁の頻度とその対処行動であった。ⅡQの感情5項目との関連では、両群とも尿失禁の影響によって、神経質・不安、心配、欲求不満で相関がみられた。尿失禁の病態によって強い不満が生じる要因は異なった。治療と共に、患者個々が持つ鬱屈した心情を少しでも軽減させるような関わりが必要とされていることが示唆された。