2025 年 10 巻 1 号 p. 27-34
希少がんは症例数の少なさゆえに診断・治療法の整備が遅れており,研究用の臨床検体や患者由来がんモデルが入手しがたい.本稿では,症例数が少ないことに起因する制約が希少がんのプロテオーム解析に及ぼす影響と,その克服に向けた工夫として古いFFPE病理標本の利活用やリビングバイオバンクの整備について述べる.また,筆者の研究室で樹立され肉腫細胞株やゼノグラフトなどの患者由来モデルを紹介し,研究資源の共有の重要性について議論する.さらに,希少がん研究で開発される手法や概念が,分子異常に基づいて細分化される他のがん種の研究に応用されうるという「リバース・イノベーション」を提案する.疾患の希少性に由来する課題に正面から向き合うことは,がん研究全体の未来を先取りする試みである.希少がん研究の推進は,臨床検体のバイオバンク体制やがんモデルの開発を通じて,がん研究全体に貢献するだろう.