2026 年 11 巻 1 号 p. 23-28
著者らはこれまで,グライコプロテオミクスを基盤として,がんにおける糖鎖変化の解析手法の開発と応用を進めてきた.本稿では,乳がん細胞株を用いたN-グライコプロテオミクス,乳がん臨床組織におけるlysosome-associated membrane protein 1(LAMP1)を対象とした部位特異的N-糖鎖解析,および血清を対象としたO-グライコプロテオミクスによる大腸がん関連糖ペプチド解析について概説した.細胞株の解析では,糖鎖変化が糖タンパク質の局在変化と関連する可能性が示され,臨床組織の解析では,糖鎖付加部位ごとに異なる糖鎖プロファイルが観察された.さらに血清の解析では,ムチン型O-糖鎖を有する糖ペプチドが同定され,血中に反映される糖鎖変化を特定タンパク質由来の糖ペプチドとして捉えられる可能性が示された.こうしたことから,グライコプロテオミクスは,糖鎖変化をタンパク質種,糖鎖付加部位,さらには生体試料の違いと関連付けて理解するための有用な解析基盤と考えられる.