日本プロテオーム学会誌
Online ISSN : 2432-2776
ISSN-L : 2432-2776
総合論文
癌悪性化機構の解明を目指したリン酸化プロテオーム解析
木村 鮎子平野 久
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2017 年 2 巻 1 号 p. 37-45

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抄録

タンパク質のリン酸化は,癌の進展や悪性化に関わる重要な因子の一つである.著者らは,卵巣癌組織型の中でも特に悪性度の高い卵巣明細胞癌の病態機構の解明を目指して,癌組織に由来する培養細胞株を用いたリン酸化プロテオームの比較定量解析を行った.結果として,卵巣明細胞癌を含む様々な種類の癌での遺伝子変異が多数報告されているARID1A(AT-rich interactive domain-containing protein 1A)をはじめとする,SWI/SNF(SWItch/Sucrose Non-Fermentable)クロマチン再構成複合体の5つの構成因子の顕著なリン酸化ペプチドレベル低下を検出した.さらに,MRM法による高感度なリン酸化・非リン酸化ペプチドの同時比較定量解析系の確立により,卵巣明細胞癌細胞株では,ARID1Aのタンパク質レベルの低下と,SWI/SNF複合体コア因子BRG1(brahma-related gene 1)の顕著なリン酸化レベル低下が生じていることを明らかにし,このことがSWI/SNF複合体の機能低下による癌悪性化の要因となる可能性を見いだした.

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© 2017 日本プロテオーム学会
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