2018 年 3 巻 1 号 p. 5-13
質量分析技術(MS)の臨床現場での活用が加速している.MALDI-TOF MSを用いて病原菌の菌体プロテオームを解析し,その結果から菌種を同定する手法を用いると,従来法よりも約1日早く病原菌種名を知ることが可能となり,臨床微生物検査に革命的な変化が起きている.当初は培地上のコロニーを検体としていたが,近年では血流感染症(敗血症)や細菌性髄膜炎の診断においても活躍している.しかし,抗菌薬に対する感受性・耐性の判別はMALDI-TOF MSのみでは限界があり,LC/MS/MSや遺伝子レベルの手法との併用が必要となる.臨床化学の領域においても,従来の主流であるイムノアッセイによる測定では抗体の特異性に限界があり,MSの導入が始まっている.MS技術が今後臨床検査において広く活用される事に備えて,日本医用マススペクトル学会では2013年に医用質量分析認定士制度を発足させ,現時点ですでに298名が認定を受けている.