2018 年 3 巻 2 号 p. 47-54
薬物動態研究は,創薬における医薬品開発の迅速化と効率の上昇,臨床における薬効や毒性・副作用発現,薬物相互作用を理解・予測する上で重要な役割を果たしている.近年,ヒトにおける薬物動態を精度高く予測するためには,薬物の輸送や代謝に関わる薬物トランスポーターや薬物代謝酵素の特性・活性解析だけでなく,multiple reaction monitoring(MRM)法を用いた定量プロテオーム解析によって得られるタンパク質発現定量情報が必要であることが明らかにされてきた.Sequential window acquisition of all theoretical fragment ion spectra(SWATH)法は1回の測定で試料中から得られるすべてのMS/MSスペクトルデータをもとに網羅的にタンパク質定量が可能であり,MRM法よりも多分子を同時に定量できる利点を有する.そこで本論文では,SWATH法を用いた網羅的定量プロテオーム解析の薬物動態研究への有用性と将来性について概説する.