2019 年 4 巻 1 号 p. 31-40
次世代医療においては,遺伝および環境要因で形成されるヒトの表現型に基づいた個別化医療あるいは予防医療を可能とする疾患リスク因子の開発が求められている.生体内代謝物の集団(メタボローム)は,ヒトの表現型を比較的良く反映すると考えられており,臨床研究のみならず大規模コホート研究を対象とした解析による新たな疾患リスク因子の創出が期待されている.東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)は,大規模コホート研究の参加者から得られた血漿検体に含まれるメタボロームを解析し,日本人多層オミックス参照パネル(jMorp)の開発と疾患リスク因子の探索研究を実施している.本稿では,ToMMoで開発したガスクロマトグラフィー三連四重極型質量分析計(GC-MS/MS)による大規模ヒト血漿メタボローム解析プロトコルと,1,028検体の解析により新たにjMorpに掲載された169代謝物について記述した.