日本プロテオーム学会誌
Online ISSN : 2432-2776
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総合論文
多次元赤外円二色性分光法の生体関連物質への応用
佐藤 久子
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2024 年 9 巻 1 号 p. 13-20

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抄録

右手左手の関係のような分子不斉(キラリティ)を検出する方法として,赤外領域での円二色性分光法(VCD法)がある.本稿では,VCD法を用いた最近の我々の研究例を紹介する.特に着目したのは,ゲルや分子結晶にみられるような多数の分子が連結することによってはじめて現れる不斉構造(“超分子キラリティ”と呼ぶ)である.その解明のためのVCD法の開発を行ってきた.特に最近,従来の波数軸に時間軸と空間軸を加え,顕微機能を備えた多次元VCD法を開発した.高輝度の赤外光を発する量子カスケードレーザーを用いて空間分解能100 μmを達成した.これまで測定が困難であった高吸収物質や生体試料のその場観察などに応用している.ここではまず,固体VCD法によるアミノ酸やペプチドへの応用を述べる.次に顕微手法を用いた生体試料の例として,昆虫翅に適用した結果を紹介する.昆虫翅の場合,大きさ10–100 μmの各部位(翅膜,翅脈等)ごとに種々の高次構造(コイル,β-シート,α-ヘリックス等)のタンパク質ドメインが二次元的に分布していることを見出した.

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