人口学研究
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論文
PMIによる発展途上諸国の死亡力推計
勝野 真人
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1988 年 11 巻 p. 43-57

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抄録

CourbageとFarguesによって開発された死亡力の間接推計法は,死亡率の相対的年齢格差と平均寿命水準との密接な関連に着目し,死亡登録の不完全性に対して安定度の高い死亡年齢分布を媒介変数としてモデル生命表上の平均寿命レベルを推計する方法である。この方法は人口の安定性や閉鎖性の仮定を必要としないので,広範な適用範囲を持つが,安定した結果を得るためにはモデル生命表の適切なfamilyの選択が極めて重要である。そこで,今回,本法の適用上の前提条件である5歳以上の年齢層における死亡登録率の一定性に立脚したモデルの選択基準を導入した。これは,モデル生命表の各familyに,それぞれ本法を適用した際,副次的に得られる年齢階級別死亡登録率について,変動係数を比較することにより適切なモデルを選択するものである。そこで,これを35カ国の発展途上国のデータに適用して, CoaleとDemenyの4種,及び国連の5種のfamilyのモデル生命表の中から,変動係数の最も小さいモデル死亡率を選び出し,結果を検討した。得られた平均寿命レベルは,モデル選択を行なわずにCoaleとDemenyのWest Modelのみから得られた平均寿命レベルとともに,国連推計による平均寿命レベルや,生データから直接算出された死亡率に基づく生命表の平均寿命レベル等との比較において評価された。これらの推計値は,合計特殊出生率,一人当りGNP,識字率など死亡力水準との強い統計的関連が知られている人口指標や社会経済指標との関連の面からも検討され,さらに選択されたモデルの地理的分布状況も検討された。その結果,一部の国を除いては,平均寿命水準についてもモデルの地理的分布についてもほぼ妥当な死亡率モデルが得られたと考えられ,今回のモデル選択基準の導入により本推計法の信頼性は改善されたと結論した。

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© 1988 日本人口学会
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