人口学研究
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論文
近世の「人口施策」 : 二本松藩赤子養育仕法の検討
高橋 美由紀
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1998 年 23 巻 p. 41-53

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抄録

本論文では,18世紀後半に主として東北地方や北関東地方で始められた,「赤子養育仕法」という出生児数に応じて金銭などの手当を支給する出産奨励施策と地域人口の変化との関係について観察する。近世東北日本における「堕胎・間引」といった産児制限をとめ,人口増加を図る施策として赤子養育仕法はとられたと言われている。今回の分析対象地域は,現在の福島県郡山市の一部にあたる郡山上町とその周辺地域である。近世に郡山上町が位置していた二本松藩では,人口問題を重要ととらえており,時期により精度や記載様式に若干の差はあるものの,かなり綿密な人口調査が18世紀の始めから明治初期までほぼ同一の形式で行われていた。この人口調査(「人別改帳」を中心とする史料)を用いて近世の人口の様相を探ることができる。赤子養育仕法の内容と変遷,その施行状況をこれらの史料から探り,地域の総人口,出生数,出生率などと仕法の関係とを考える。結論としては,1)合計特殊出生率が低下した後では支給手当が高くなる,2)双子の出生記録は赤子養育仕法の施行と共に増加した,3)仕法は母親が奉公中の出産には,特に手当を与えるなど,領民の実情に応じたきめ細かな手当内容であった,4)二本松藩領内では,19世紀第1四半世紀に入って出生数及び人口増加が始まったと思われ,この頃から赤子養育仕法のに関する記録が少なくなった,ということが見て取れる。

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© 1998 日本人口学会
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