論文ID: 2102001
ラオス国内の人口移動に関する研究には,農村間人口移動と都市-農村間人口移動の関係や都市への恒久的な移動プロセスに関する議論が不足している。そこで本稿は,農村内の人口動態と移住者のライフコースを関連づけて,ラオスにおける都市-農村間人口移動の特徴を検討した。ラオス北部の縁辺部に位置する低地の一農村を事例とし,全42世帯と村からビエンチャン都へ移住した22人に対するインタビュー調査を実施した。分析の結果,ラオスでは,国家政策として高地から低地への農村間移動が促されており,これが農村における人口動態に大きな影響を及ぼしている。結果として,都市への移動が活発化しているといえる。また,都市への移住者たちは,低熟練労働力を求めるビエンチャンの都市労働市場に参入し始めるが,その後は就業条件や生活基盤の改善を目指して転職し,都市定住化を進めていく。同時に,出身村との関係を維持することで移住のリスクを低減しようとしながらも,ビエンチャンでの生活基盤が強固になるほど,村との結びつきは弱くなり,恒久離村へ切り替わっていく。そのきっかけは,労働市場との関係だけでなく,子どもの教育とも深く関わっている。