日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
雌鶏生殖道における精子の行動
I. 卵管内における精子の存在
武田 晃
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1964 年 1 巻 1 号 p. 19-31

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抄録

1. 人工授精後最長21日間, 平均11.1日間にわたり受精卵が産出された, 注入後6日までは90%以上の受精率を示したが, 13日以降は40%以下に低下した。
2. 人工授精後4日までは卵管各部のスメヤー中に精子が見出されたが, その後は漏斗部後半ならびに子宮部から腟部への移行部附近のスメヤーのみに局限され, 前者においては7日後, 後者においては22日後にも精子が認められた。
3. 漏斗部後半および子宮-腟移行部に存在する腺の腺腔中に, 前者においては15日後, 後者においては30日後にいたるまで精子が包蔵されていた, しかし22日以降においては腺腔中に包蔵された精子は分解像を呈した。また腺腔中に発見される精子の数は漏斗部においてはきわめて少ないが, 移行部においてはしばしば集団状をなし前者にくらべはるかに多かった。
4. 注入精子数が6億ないし1.5億のときには高い受精率を示したが, 3000万では半減し, 400万では受精卵は全く得られなかった。400万注入の場合スメヤー中には精子を見出すことはできなかったが, 移行部の腺腔中には精子が包蔵されていた。
5. 移行部の腺腔中には受精卵産出期間であると否とにかかわらず精子が発見されたが, 漏斗部の腺腔中においては受精卵産出期間中には精子発見例が多く, 無精卵産出期に入ったものでは少なかった。
6. 精子を包蔵する腺は漏斗部後半3~5cmの間, および子宮部から腟部への移行部1~1.5cmの間のみに存在した。
7. 死亡精子を人工授精した場合にも精子は卵管を上昇したが, 腺腔中には全く侵入しなかった。

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