抄録
鶏血清ビテリンの免疫学的な測定方法として, 従来から重層沈降反応が用いられてきたが, より正確な定量的方法として, LAURELL の電気的免疫拡散法によって血清ビテリンの測定を行なった。
電気的免疫拡散法は次の方法で行なった。1%アガロース液6mlに抗ビテリン血清0.4mlを混合し, 8×8cmの大きさのアガロースゲルプレートを作った。陽極側に試料を入れ, 各プレート当り15mAで2時間泳動し, 沈降線の長さから血清ビテリン量を求めた。
10羽の産卵鶏の混合血清を標準試料として, 2n稀釈して泳動した結果, 各試料とも長い沈降線とその内側の短かい沈降線の2本が認められ, 長い沈降線は4~256倍稀釈の範囲において, y=2.52-0.07x, 短かい沈降線は4~64倍において, y=2.17-0.14xの直線回帰式が得られた (yは稀釈倍率の常用対数, xは沈降線の長さ, mm)。したがって, この範囲のビテリン濃度においては, 血清ビテリンの測定に電気的免疫拡散法が利用できる。
発育に伴なう血清ビテリン濃度を長い沈降線により測定した結果, 14週齢においては, 28羽中1羽に沈降線が認められ, 22週齢までにすべての鶏の血清中にビテリンが検出された。ビテリン濃度はいずれの場合も, 最初に沈降線が認められた翌週に著るしく増加し, 3~4週間後に最高値となり, その後減少した。また, ビテリンの出現週齢と初産日齢の間の相関係数は0.41で有意な値であった。
産卵鶏血清を100, 200×gで4時間遠心し, 上, 中, 下の3層に分画して, それらの分画と抗ビテリン血清との反応を電気的免疫拡散法と免疫電気泳動で検討した。全血清において認められた長い沈降線は超遠心分画における中, 下層に相当し, 短かい沈降線は上層と一致した。これらのことから, 産卵鶏血清の上層分画に含まれる low dersity の燐脂質蛋白質と下層分画に含まれる燐蛋白質を, それぞれ別個に測定できる可能性が示唆された。