日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
鶏精子の温度による Reversible Inactivation に関する研究
II. O2消費ならびに保存に及ぼす Reversible Inactivation の影響
武田 晃
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1982 年 19 巻 3 号 p. 135-139

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抄録
鶏精子がその体温付近の温度において起こす Reversible Inactivation の現象ならびにこの Reversible Inactivation に影響を及ぼす諸要因については既に報告した。今回は鶏精子のO2消費とこの Reversible Inactivation との関連ならびに鶏精子の保存に及ぼすこのReversible Inactivation の影響について検討した。
ワールブルグ法によるO2消費量 (ZO2) の測定において, 鶏赤血球や羊精子および血漿希釈鶏精子は30°Cにおけるより40°Cの方がZO2が有意に高かったが, KRP希釈鶏精子では逆に40°Cにおけるよりも30°CにおいてZO2が有意に高かった。これはワールブルグ法における精子液の間断なき振盪操作中にもKRP希釈鶏精子は40°Cにおいて Reversible Inactivation を起こしているためと解された。またKRP洗浄鶏精子においては40°Cと30°Cとの間でZO2に有意差が認められなかったが, これは40°Cにおける方が30°Cにおけるよりも短時間内に Reversible Inactivation に起こしたためと解された。これらの結果は懸滴標本の顕微鏡観察時に認められる鶏精子の Reversible Inactivation と一致するものであった。
KRP液により洗浄懸濁ならびに希釈された鶏精子は45, 40および30°C保存においてはそれぞれの生存時間の間に有意差を認めなかった。またこれらの各温度と20°C保存の間ではいずれも20°Cの方が生存時間が有意に長く, 高温暴露時に起こる Reversible Inactivation によって低温保存時より生存時間が延長されることはなかった。
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