日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
鶏精子のブドウ糖消費に及ぼす精子密度の影響
寺田 隆登渡辺 守之
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 20 巻 1 号 p. 36-41

詳細
抄録
精子密度が精子の糖代謝に及ぼす影響を追究する目的で,鶏の洗浄精子を種々の溶液に1×108, 5×108及び10×108精子/mlの密度になるように浮游させ,41°Cで2ないし4時間加温振盪し,精子のブドウ糖消費量を測定した。その結果は次の通りである。
1) リン酸緩衝液に洗浄精子を浮游させた場合には精子密度が高くなるにしたがって108精子当りのブドウ糖消費量は直線的に増加した。
2) 精漿あるいは血清を15%含むリン酸緩衝液に洗浄精子を浮游させた場合には精子密度の増加とともに108精子当りのブドウ糖消費量は増加した。しかし,両体液を50及び83%含む緩衝液に浮游させた際には精子密度が高いほど108精子当りのブドウ糖消費量は減少する傾向を示した。
3) リンゲル液あるいはレークB液を15, 50及び83%含むリン酸緩衝液に洗浄精子を浮游させた場合には,精子密度の増加に伴い108精子当りのブドウ糖消費量は増加した。
4) 高濃度の血清あるいは精漿は,精子のブドウ糖消費量をかなり増加させた。
5) 以上の結果から,血清や精漿は精子の糖代謝を活発にさせる因子を含むとともに,これらの体液を高濃度に添加した溶液中で精子密度が低下すると精子の糖代謝が活発になるものと考えられた。さらにこれらのことから,鶏の自然交尾時においては,副生殖器官液の添加と,そのことから生じる精子密度の減少は精子の糖代謝を活発にさせるものと推察された。
著者関連情報
© 日本家禽学会
前の記事 次の記事
feedback
Top