抄録
日本のブロイラー生産は170万トン規模に拡大し,さらに最近10年間のブロイラー輸入も10万トンに達し,価格はkg当たり350円から290円へと低落した。その原因として国内生産過剰説と輸入増大説が出されているが,国内の生産調整も充分なされていない現在,両方の原因と考えられよう。さらに1984年4月からブロイラー関税は,20%から骨つき肉は12.5%(62年度10%)骨なし肉は18%へと引きさげられ,その関税率の差をめぐって,国別保護説と国内差別説が日タイの間で鋭く対立した。
そうしたなかでタイにおけるブロイラー生産がどのようなものか,日本のブロイラー産業への脅威的影響を与える規模拡大が行なわれうる見解と,産業の後進性故にコスト高で競争力は弱いとする見解があり,今回,その実態調査を行なった。
訪問した企業は1983年のLT社を併せると6社となり,BF社のみ調査ができていない。タイのブロイラー生産の展開は,その緒について以来,対外輸出,とりわけ対日輸出の拡大によって進展した。それは日本側商社の技術指導により末端ユーザーの需要に応じたパッカー的対応によっている。
タイのブロイラーの特徴をみれば,(1)飼料(タイメイズ)の国内生産。(2)価格変動は大きいが価格安。(3)イエローコーンのため甘味があり肉色がよいといわれていること。(4)ひな価格は安いが変動が大きい。(5)独立生産が半分,インテグレーションが半分で,free market が30~40%でこれは,生鳥流通であるという特徴がある。したがって生鳥の価格変動も大きい。(6)生鳥は1.8kg以下の小ものであり,脂味は少ない。(7)ブロイラー処理場での労働力は若く,労働の質もよいが,労賃は安い。(8)処理場は大規模でInspectorをおき,低労賃故に加工度も高い。(9)処理場は輸出用工場と単なるSlaughterhouseとに二分され,流通チャンネルも二分されている。(10)副産物の売値がよく,1羽当り200円ぐらいに評価されるが日本では1羽40~70円にすぎない。
これは正に『鳴き声以外はすべて加工し,利用する』という。そして『正肉は日本へ,副産物はバンコクへ』という流通であり,結合利用商品と呼ぶことができる。