抄録
唐辛子の辛み成分として知られるカプサイシンには,β-アドレナリン作用があることが知られている。その作用によりラットでは,脂肪蓄積の低下及びエネルギー代謝の高進が起こる。そこで本実験においては,飼料唐辛子が産卵鶏の摂食行動,腹腔脂肪含量及び産卵成績にどのような影響を及ぼすかを調査した。
産卵鶏用飼料にカプサイシンを0.22%含有する唐辛子を0,0.2及び1%となるように配合し,10週間給与した。その結果,摂食行動に関しては,短期的ならびに長期的のどちらにおいても唐辛子による影響は認められなかった。産卵鶏は辛み成分に対し,味覚があまり発達していないことが示唆された。
腹腔脂肪含量ならびに肝臓脂肪含量は,飼料唐辛子によりあまり影響を受けず,カプサイシンによるβ-アドレナリン作用はニワトリにおいてはラットよりも小さいものと推定された。また産卵成績は飼料唐辛子によりほとんど影響を受けなかった。
卵黄色に関しては,唐辛子含量の増加に伴いロッシュのカラーファンスコアーと赤色度は増加するが,黄色度と明度は逆に低下した。
以上のことより,唐辛子は卵黄の着色剤としては有効であるが,脂質の制御の点からすれば有効な飼料成分になり得ないことが判明した。