日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
鶏の産卵に対するMultiphasicモデルの適用
ミン ルックキィウ三好 俊三光本 孝次
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1995 年 32 巻 3 号 p. 161-168

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抄録

鶏の産卵にはクラッチが存在する。本研究ではそのクラッチに関連する形質の産卵期間における変異性を検討した。また,KOOPSとGROSSMAN(1992)が提案したMultiphasicモデルを用い,卵墜を考慮して個体の年間総産卵数の予測を試みた。
卵黄•卵白比の高および低方向に選抜育種された鶏群(高系統;135羽,低系統;123羽)を用い,放卵時間を4つの時点(各々約30日間)で観察した。分析に用いたクラッチ形質は卵墜率(IP),クラッチ数(CN),クラッチ長(CL),クラッチサイズ(CS)およびMultiphasicモデルから推定したLAG(クラッチ内の放卵間隔と日長との差)とDELAY(休産日の長さと日長との差)である。
LAGには観察期間で両系統とも有意差が認められなかったが,DELAYは産卵の進行に伴って有意に増加した。また,IPとCNも増加傾向にあった。それに対し,CLおよびCSは減少傾向にあった。一方,LAGは高系統が有意に短い時間で推移し,高い産卵が予測されたが,卵墜率は高系統が有意に高い値で推移し,実際の産卵数は同等であった。
LAGとCNとには正の相対的に高い相関関係が存在し,CLおよびCS間には中位の負の相関係数が推定された。このことは放卵間隔の短い個体が高い産卵を示唆するものである。卵墜もクラッチに含めたため,LAGとIPには負の相関係数が推定された。
初産から120日および188日での観察期間から推定したクラッチ形質を用い,270日間および360日間の産卵数を予測した場合,いずれも過大(約35卵)となった。予測値と実測値との相関係数は0.6~0.8が推定された。これらのことより,Multiphasicモデルを用いて個体の年間産卵数をある程度予測が可能であると推察した。

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