鶏肉成分及び呈味に対する飼養条件の影響を検討した。3週齢の雌ブロイラーを供試し,5週間の飼育処理を行った。処理は,飼育面積と飼料摂取量の2要因の組合せから,飼育面積を対照区の2.5倍とし自由摂取(広面積区),対照区と同面積で摂取量を1/2に制限した区(制限給与区)及び対照区の3処理とした。8週齢時に飼育成績を計測後,放血と殺し,浅胸筋を採取,水分,蛋白質,脂質,灰分,アミノ酸,無機元素及び脂肪酸の分析に供した。また同試料から加熱抽出液を調製し,遊離アミノ酸,無機イオン及びIMPを定量した。その結果,広面積区の飼育成績は対照区と同様であったが,制限給与区は増体重が62.7%,飼料効率が23.3%低下した。肉の水分,脂質,灰分には差は見られなかった。蛋白質は対照区23.5%に対し,他の区が高かった。アミノ酸組成には差は認められなかった。また特異的な変動を示す脂肪酸の存在も認あられなかった。呈味関係成分である遊離アミノ酸においては,制限区のグルタミン酸,リジン,アルギニンが有意に低かった。前報において呈味有効成分と認あられたカリウムイオン,IMP含量には有意差は認められなかった。これらのことから,肉成分は本報告の飼育モデルの影響を受けなかったが,鶏肉の呈味成分では,主呈味成分であるグルタミン酸が影響されたことから,面積及び飼料給与量の飼養条件の相違は,鶏肉の呈味に影響を及ぼす可能性が示唆された。