日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
アヒル内頚動脈,脳動脈系におけるノルアドレナリン含有およびアセチルコリンエステラーゼ陽性神経支配に関する組織化学的研究
安藤 光一藤原 昇草場 治雄
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1998 年 35 巻 4 号 p. 220-227

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抄録

アヒル内頚動脈,脳動脈におけるノルアドレナリン含有(NA)およびアセチルコリンエステラーゼ陽性(AChE)神経の分布•密度について,組織化学的に調べた。本鳥類の内頚動脈および脳動脈では,これら2神経の類似した支配様相が観察された。NAおよびAChE神経は内頚動脈の全域にわたり緻密な網細工を形成し,内頚動脈吻合部付近で著しく高密度であった。脳動脈系では,NAおよびAChE神経は椎骨•脳底動脈系よりも内頚動脈に沿って明らかな優勢分布を示し,支配密度は前幹枝遠部から中大動脈にかけて特に高かった。脳血管NAおよびAChE神経は主に内頚動脈経由で脳動脈系へ投射するが,NA神経は上頚神経節から放出された内頚交感神経幹(SICN)に専ら由来する。他方,AChE神経はSICNに伴行する神経幹内のAChE神経細胞に起因する可能性が高い。これに加えて,内頚動脈に分布するAChE神経の一群は本脳動脈系に内在するAChE神経細胞から発するものと考えられる。結論として,今回報じられたアヒル内頚動脈,脳動脈のNAおよびAChE神経の支配様相は前回報じたAChE神経の著しい低密度あるいは欠如により特徴づけられるウズラの不均衡なNAおよびAChE神経支配と大きく異なる。このことは鳥類の脳循環系に関与しているコリン作動神経調節機構に明らかな種間差があることを示唆しているものと考える。

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