抄録
4週齢までの若いヒナの, 飼料エネルギーと蛋白質含量の変化に対応する成長反応は, 2次式で説明され, 廻転だ円面をあてはめうることが示された1,2)。これらの実験は4週間であって, その結論を,ブロイラーとして出荷される8~10週齢までのヒナに適用できるか否かを確かめることを目的として, 本研究を実施した。
実験方法: 純粋種4種類, 一代雑種4種類の初生ヒナ合計1,320羽を用いて, 8回の実験を1962~1966年の5年間にわたって行なった。ヒナは9区に区分して, 9種類の初生用飼料のいずれかを与えて, 4週間育成し, その後, ケージに移して仕上用飼料に切替えて, 8または10週齢まで飼育した。試験用飼料は, トウモロコシ, 大豆粕, ヌカ•フスマ類, タローなどを主とする組成のもので, 初生用飼料は, 可消化養分総量(以下TDN)3水準, すなわち, 83, 73および63%, ならびに粗蛋白質含量3水準, すなわち, 26, 22および18%, をそれぞれ組合せた9種類であって, 仕上用飼料は, それぞれ対応する初生用飼料と同じTDN含量で, 蛋白質を2%ずつ低下し, ビタミンと無機物含量も低くした組成の9種類である。
体重と飼料摂取量とは1週間ごとに測定したが, 統計的な解析は, 4, 6, 8および10週齢のデータについてのみ行なった。解析方法は前報2)の場合と同様に3段階とし, まず, 性別による反応パターンが相似であることを確かめた後, 雄のみのデータと雌雄混飼のデータを合併して, 分割区法により解析した。ついで, 供試した8鶏種を2群に区分して, それぞれの反応曲面を検討した。
結論: 本実験の結果からつぎのような結論がえられた。
1) 供試した各鶏種の, 4, 6, 8および10週齢時の成長反応は, 飼料のエネルギーおよび蛋白質含量の変化に対応して, (1)~(8)式に示した2元2次式で説明され, 反応曲面はすべて, 廻転だ円面をあてはめることができる。
2) 増体量の反応曲面のパターンの差異にもとずき, 飼料エネルギーおよび蛋白質含量の変化に対してより鋭敏に反応する肉用種群と, それ程鋭敏ではない卵用種群とに2分できる。肉用種群としては, 白色コーニッシュ種 (WC), 白色プリマスロック種 (WR) およびWCとのF1が含まれ, 卵用種群としては, 白色レグホーン種(WL), 横斑プリマスロック種(BR)およびそのF1, WL×BRが含まれる。前報2)で認められた, WCとWR間あるいはWLとBR間の差が本実験では認められず, それぞれ肉用種あるいは卵用種としてまとめられた理由としては, 第1に, 本実験では1鶏種につき1回の実験を行なっているのみであるので, 鶏種間差と実験条件の影響が交絡しており, 前報2)の場合のように鶏種間差を純粋に取出していないこと, および第2に, 試験飼料のエネルギーの変化の幅が前報2)の実験に比して著しく狭いことが考えられる。
3) 単位飼料摂取量あたりの増体量, すなわち, 飼料効率についてみれば, 各週齢とも, 反応曲面に鶏種間差は認められなかった。この知見は, 前報2)の知見と一致し, 増体量において認められた反応曲面の鶏種間差は, 主として, 濃縮された飼料を摂取する能力の鶏種間差によるものであることを示唆している。
4) (1)~(12)式を偏微分することにより, 飼料エネルギーが所定量のときに, ヒナの反応を最大にする飼料蛋白質を推定することができる。これは4週齢では24~26%であり, それ以後は22~24%であった。したがって, 最適蛋白質含量は, 鶏種にかかわらず, 4週齢以後, 2%ずつ低下できることが示唆された。同様にして, 飼料蛋白質が所定量のときの最適エネルギー量を推定すると, 実験条件の上限値を上廻ることになり, 推定値の信頼性は著しく低いことになる。
5) 鶏種, 週齢にかかわらず廻転だ円面を適用できるので, ブロイラー用飼料設計の指針としてカロリー•蛋白比を用いる理論的根拠は薄弱となる。線型計画法により飼料を設計する場合には, 飼料のエネルギーと蛋白質含量を組合せて指定するか, カロリー•蛋白比と蛋白質含量(またはエネルギー含量)を組合せて指定する必要があろう。