日本薬理学会年会要旨集
Online ISSN : 2435-4953
第95回日本薬理学会年会
セッションID: 95_3-SL09
会議情報

特別講演
アミノ酸トランスポーターLAT1(SLC7A5)の薬理学:病態形成における役割と創薬展開
*金井 好克
著者情報
会議録・要旨集 オープンアクセス

詳細
抄録

トランスポーターは生体内の物質分布に寄与する膜タンパク質であり、それを標的とする薬物により多様な代謝制御を実現することができる。がん細胞をはじめとする病態形成に関わる細胞においては、代謝リプログラミングによる代謝系の変化が細胞生存や機能維持に必須の役割を果たすことが多い。特に代謝改変に寄与する栄養素のトランスポーターは、細胞内代謝に介入して病態進展を阻止する薬物の標的となり得る。演者らは、がん細胞に発現亢進するアミノ酸トランスポーターLAT1 (SLC7A5)を見出し、それがmTORC1を中心とするアミノ酸シグナル系を介してがん細胞特有の機能の維持に寄与することを明らかにしてきた。構造活性相関解析に基づいて創製した阻害薬は、抗腫瘍効果を示し、また血管内皮細胞や免疫系細胞など病態形成の過程でLAT1を発現するがん細胞以外の細胞の機能制御にも有用であることが明らかになった。さらに、最近クライオ電顕によりLAT1の構造が解け、基質認識と阻害薬の作用の機序も示された。本講演では、LAT1阻害薬によって見えてきた代謝リプログラミングにおけるトランスポーターの役割を含め、LAT1の創薬標的としての意義について議論したい。

著者関連情報
© 2022 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top