2025 年 5 巻 1 号 p. 10-19
【目的】本研究では新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛生活が,地域在住高齢者の心身機能,生活機能,ソーシャル・キャピタルへ与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者245名とし,回顧的自己報告にてアンケート調査を実施した。基本属性,基本チェックリスト,ソーシャル・キャピタルに関する項目について,第1回緊急事態宣言の前と後の状態を聴取した.【結果】基本チェックリスト合計点は,緊急事態宣言前の2020年4月と比べ緊急事態宣言後の2021年6月に有意に増加した。緊急事態宣言前のソーシャル・キャピタル強度と基本チェックリスト合計点には負の相関が認められた。ソーシャル・キャピタル強度は緊急事態宣言の前と後で有意な差は認められなかった。緊急事態宣言前のソーシャル・キャピタル強度が高い人ほど緊急事態宣言後の基本チェックリスト合計点が増加していた。【結論】新型コロナウイルス感染拡大に伴う生活様式の変化により,地域在住高齢者の心身機能と生活機能は低下しており,元々ソーシャル・キャピタル強度が高かった人ほどその影響を受けやすいことが示唆された。今後,新たな感染症拡大や自然災害によって外出自粛生活を余儀なくされた場合には,個人のソーシャル・キャピタルを考慮した対策が必要だと考えられた。