日本予防理学療法学会雑誌
Online ISSN : 2436-9950
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巻頭言
研究論文(原著)
  • –生体電気インピーダンス法を用いた検討–
    池田 尚也, 藤井 祐貴, 石井 咲良
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2025 年5 巻1 号 p. 2-9
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/10/09
    [早期公開] 公開日: 2025/04/21
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    【目的】脊椎圧迫骨折患者の歩行能力と体幹筋量の関連性を明らかにする。【方法】105名の脊椎圧迫骨折女性患者を対象とした。退院時のFunctional independence measure(FIM)歩行得点を基に歩行自立群と非自立群に分類した。さらに入院時の年齢,骨折数,併存疾患,認知機能,四肢骨格筋指数と体幹筋指数,FIMのデータを抽出した。ロジスティック回帰分析と決定木分析を用いて,退院時の歩行自立可否に関連する要因とカットオフ値を算出した。【結果】ロジスティック回帰分析では併存疾患,認知機能,体幹筋指数,FIM運動得点が選択された。決定木分析では体幹筋指数と認知機能が選択され,入院時に体幹筋指数が5.4kg/m2以上であれば退院時に歩行が自立する確率が高かった。【結論】脊椎圧迫骨折患者の歩行能力には体幹筋量が関連していた。

  • 栗田 麻結, 竹内 真太, 石井 秀明, 西田 裕介
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2025 年5 巻1 号 p. 10-19
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/10/09
    [早期公開] 公開日: 2025/05/09
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    【目的】本研究では新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛生活が,地域在住高齢者の心身機能,生活機能,ソーシャル・キャピタルへ与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者245名とし,回顧的自己報告にてアンケート調査を実施した。基本属性,基本チェックリスト,ソーシャル・キャピタルに関する項目について,第1回緊急事態宣言の前と後の状態を聴取した.【結果】基本チェックリスト合計点は,緊急事態宣言前の2020年4月と比べ緊急事態宣言後の2021年6月に有意に増加した。緊急事態宣言前のソーシャル・キャピタル強度と基本チェックリスト合計点には負の相関が認められた。ソーシャル・キャピタル強度は緊急事態宣言の前と後で有意な差は認められなかった。緊急事態宣言前のソーシャル・キャピタル強度が高い人ほど緊急事態宣言後の基本チェックリスト合計点が増加していた。【結論】新型コロナウイルス感染拡大に伴う生活様式の変化により,地域在住高齢者の心身機能と生活機能は低下しており,元々ソーシャル・キャピタル強度が高かった人ほどその影響を受けやすいことが示唆された。今後,新たな感染症拡大や自然災害によって外出自粛生活を余儀なくされた場合には,個人のソーシャル・キャピタルを考慮した対策が必要だと考えられた。

  • 熊谷 奨, 沖波 武, 大野 翼, 高橋 亮人, 末吉 謙斗, 上村 勇介
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2025 年5 巻1 号 p. 20-27
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/10/09
    [早期公開] 公開日: 2025/06/06
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    【目的】当院における多疾患併存(multimorbidity)を有する患者の再入院の現状を知り,再入院に関連する因子について明らかにすることを目的とした。【方法】当院に入院した患者の中で退院後,経過の追跡および各種データ抽出が可能であった331人の中からmultimorbidityを有する患者223人を対象とし,診療カルテおよびリハビリテーション実施記録から後方視的に情報収集を行った。評価項目としては基本属性,在宅医療サービス利用の有無,FIM認知合計スコア,FIM運動各項目スコアを対象とした。【結果】Cox比例ハザード回帰分析において運動FIM上半身・下半身更衣の非自立が再入院について調整ハザード比3.04(95%信頼区間:1.57-5.89,p=0.001)と有意な関連を示した。【考察】 運動FIM上半身・下半身更衣の自立が再入院リスクを軽減させる可能性が考えられた。

  • 安中 聡一, 対馬 栄輝
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2025 年5 巻1 号 p. 28-35
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/10/09
    [早期公開] 公開日: 2025/05/29
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    【目的】幼児の肥満は世界的な懸念事項であり,本邦においても増加を認めている。本研究は,幼児期の肥満に影響を及ぼす要因について,粗大運動発達も含めて明らかにすることを目的として実施した。【方法】保育施設に通う幼児の母親を対象にアンケート調査を実施した。アンケートでは,幼児と母親の日常生活や粗大運動を獲得した月齢に関するデータを収集した。幼児の身長と体重から肥満度を算出し,肥満度を従属変数とする重回帰分析を行った。【結果】対象者は69例で,そのうち44例は肥満度が高く,25例は低い値を示した。肥満度が高い群では,帝王切開での出産と歩行開始の遅れが主要な要因であった。一方,肥満度が低い群では,寝返りと歩行開始の遅れ,母親の若年齢,完全ミルク育児が影響していた。【考察】幼児期の粗大運動発達は,肥満と痩身に影響を及ぼす可能性がある。今後は,成長過程での体重変化の原因についても検討する必要がある。

  • -発達課題の早期発見と早期支援にむけて-
    成田 亜希, 大西 満
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2025 年5 巻1 号 p. 36-43
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/10/09
    [早期公開] 公開日: 2025/05/08
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    【目的】発達障害児の早期発見・早期支援が課題となっている中,幼児期から行動面での困難さを運動特性との関係性から明らかにすることは重要である。本研究では4歳児での関係性を探索する。【方法】4歳児52名を対象に行動特性(SDQ)と運動特性(MKS)の関係を調査した。【結果】SDQとMKSの関係については,男女ともに,多動/不注意の問題が両足連続跳び越しと正の相関を示し,情緒の問題が立ち幅跳びと負の相関を示した。向社会的な行動についても男女ともに,両足連続跳び越しと負の相関を示し,捕球と正の相関を示した。さらに,男児は,25m走と負の相関を示し,立ち幅跳びやボール投げとも正の相関を示した。【考察】保育場面では,活動の中で力強さ,タイミング,すばやさを取り入れることで,行動面での発達課題への対応が期待できる。

  • ―通院終了6ヶ月における臨床スコア・身体機能の推移―
    岩崎 翼
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2025 年5 巻1 号 p. 44-51
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/10/09
    [早期公開] 公開日: 2025/06/13
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    【目的】理学療法終了後の地域在住変形性膝関節症患者における経過について報告は少ない。本研究では理学療法終了時と終了後6ヶ月時の臨床スコア・身体機能を比較し,その推移を調査した。【方法】理学療法終了時・終了後6ヶ月時に質問紙の回収と身体機能の測定ができた地域在住女性15名(69.2±7.5歳)を対象とした。質問紙では臨床スコア・運動習慣を確認し,身体機能は可動域・柔軟性・筋力測定を実施した。統計学的処理は理学療法終了時と終了後6ヶ月時を比較するため,正規性の検定後に2群間比較,効果量の抽出を実施した。【結果】終了後6ヶ月時に疼痛・日常生活動作に関する臨床スコア、膝伸展筋力・股関節外転筋力が有意に低下した。【考察】理学療法を終了した地域在住者は終了時と比較して臨床スコア・身体機能が低下を示すため,定期的な機能測定の重要性が示唆された。

  • 小田桐 伶, 金子 純一朗, 浅見 正人, 高見 彰淑
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2025 年5 巻1 号 p. 52-58
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/10/09
    [早期公開] 公開日: 2025/05/13
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    【目的】急性期脳卒中患者の脳卒中重症度,摂食嚥下機能,日常生活動作レベル,栄養状態の要因が発症2週時までの骨格筋量を低下させる因子になるか検討すること。【方法】対象は急性期脳卒中患者 48 名であった。方法は,体組成計を用いて全身骨格筋量を採取した対象者データと,カルテ情報を採取し,後ろ向き研究を行った。統計解析方法は,従属変数を発症~2 週時の全身骨格筋量の変化量,独立変数を発症時のNIHSS,FIM,Alb値,FILSとした重回帰分析を行った。【結果】NIHSSと交絡因子であるBMIが抽出された(R2=0.21)【結論】急性期における脳卒中者の筋肉量減少脳卒中患者を引き起こす要因として,脳卒中重症度が挙げられたが,寄与率が低く交絡因子も結果に影響を与えていた。今後は,血液データを含めたさらなる調査が必要と思われる。

  • 河村 康平, 國枝 洋太, 小山 真吾, 高橋 裕馬, 武田 晃一, 松田 雅弘, 森沢 知之, 藤野 雄次, 澤 龍一, 高橋 哲也, 高 ...
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2025 年5 巻1 号 p. 59-66
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/10/09
    [早期公開] 公開日: 2025/07/15
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    【目的】地域在住高齢者の身体的フレイル,軽度認知障害,社会的フレイルの重複とHRQOLの関連を検証する。【方法】対象は65歳以上の地域在住高齢者438名とした。HRQOLはSF-8のPCSとMCSを用いた。身体的フレイルは改訂J-CHS基準,軽度認知障害はMoCA-J, 社会的フレイルはSFIを用いてこれら3要素の重複数とHRQOLとの関連を調査した。解析はこれら3要素の重複数を独立変数,PCSおよびMCSを従属変数としたロジスティック回帰分析を実施した。【結果】これら3要素の非該当者は126名,1領域該当者は192名,2領域該当者は106名,3領域該当者は14名であった。ロジスティック回帰分析の結果,PCSは3領域該当者で,MCSは2および3領域該当者で有意に低下していた。【結論】地域在住高齢者のHRQOL低下とこれら3要素の重複が関連しており,多面的に評価することの重要性が示唆された。

実践報告
  • 惠村 美幸, 福田 文雄, 宮崎 一臣, 中薮 誠, 下門 範子, 村上 雅哉, 森口 晃一
    原稿種別: 実践報告
    2025 年5 巻1 号 p. 67-71
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/10/09
    [早期公開] 公開日: 2025/05/07
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    【目的】当院では,骨折リエゾンサービス(FLS)のためのチームを構成し活動を実施していたが,新型コロナウイルス感染拡大の影響で円滑なFLS活動が困難となった。そこで,FLS活動のシステムを再構築し,その成果を確認することとした。【方法】従来のFLS活動は骨粗鬆症マネージャーのみで行っていたが,FLS活動に必要な情報を,運動器リハビリテーションに携わる理学・作業療法士と共有し,骨粗鬆症サポーターと位置付け,活動の効率化を図った。【結果】FLS活動が円滑に継続可能となった。また骨粗鬆症の患者理解度は,「よく理解できた」(70%),「ある程度理解できた」(30%)であり,再診率は45%から67%に向上,骨粗鬆症サポーターの患者教育に対する意識の変化は高率となる副次的効果をもたらす結果となった。【考察】独自に骨粗鬆症サポーター制度を設けたことにより,安定したFLS活動が行え,患者の理解度や整形外科外来の再診率の向上に繋がった。

論文紹介
  • 西本 和平
    原稿種別: 論文紹介
    2025 年5 巻1 号 p. 72
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/10/09
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    【背景】近年,血液ベースでのサルコペニア評価の拡張性が着目されており,循環バイオマーカーへの関心が高まっている。神経可塑性の調整因子である,脳由来神経栄養因子(BDNF)と地域在住成人のサルコペニアとの関連については,データが乏しいのが現状である。本研究では,成人コホートにおいて血漿BDNF濃度とサルコペニアならびにサルコペニア構成要素との関連を横断的に検討した。【方法】対象は50~82歳の男女246名(平均年齢63.6歳,女性52%)。筋力と骨格筋量指数(SMI)は,握力測定と二重エネルギーX線吸収法(DXA)により評価され,血漿BDNF濃度は,酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いて測定された。サルコペニアはEWGSOP2の基準に従って判定された。【結果】サルコペニアを有する者では,血漿BDNF濃度がサルコペニアでない者と比較し47.6%高く,サルコペニアの判定精度としても良好なAUCを示した(AUC 0.702, cut off > 1645pg/ml)。BDNF濃度が1645pg/mlを超える場合,サルコペニアのオッズは2.83倍高くなった(95%CI 1.13-7.11)。共変量として,性別,年齢,BMI,身体活動,喫煙,飲酒,併存疾患,教育歴により調整した。【結論】地域在住の成人男女において,サルコペニアを有する者では血中BDNF濃度が上昇しており,この上昇は神経筋の再構築が亢進していることを反映している可能性がある。本研究結果は神経の健全性と骨格筋の健康との間に複雑な関係が存在することを示唆している。

  • 山際 大樹
    原稿種別: 論文紹介
    2025 年5 巻1 号 p. 73
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/10/09
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    【背景】先行研究は,体温 (Tb),ひいては脳温がアルツハイマー病 (AD)におけるタウ病理と双方向に相互作用する可能性があることを示唆している。タウのリン酸化は,ヒトの生理学的範囲内でのわずかな (1℃未満)体温低下によって大幅に促進され,ADの進行初期において体温調節核がタウ病理の影響を受ける。本研究では,認知機能が正常な高齢者において,Tb (脳温の代理指標)が臨床的に用いられるタウ病理マーカーと横断的に関連するかどうかを評価した。【方法】摂取型テレメトリーセンサーを用いて,Tbを48時間連続測定した。この測定期間には,覚醒時と睡眠時のTbがタウ病理との関連に差があるかどうかを明らかにするために,2晩の夜間睡眠ポリグラフ検査も含めた。タウのリン酸化は,Tb測定の翌日に採取した血漿および脳脊髄液中のトレオニン181がリン酸化されているタウ (p-タウ)を用いて評価した。さらに,平均1ヶ月後に[18F]MK-6240放射性トレーサーを用いてPET-MRにより,早期ブラーク病期領域における神経原線維変化 (NFT)量を画像化した。【結果】Tbの低下は,NFT量の増加,ならびに血漿および髄液中のp-タウ濃度の上昇と関連していた (p < 0.05)。NFT量は,覚醒時のTbの低下と関連していた (p < 0.05)が,睡眠時には関連していなかった。血漿および髄液中のp-タウ濃度は互いに高い相関関係にあり (p < 0.05),両変数ともタウタングルの放射性トレーサー取り込みと相関していた (p < 0.05)。【結論】ヒトにおける初めての研究結果であるこれらの結果は,高齢者における低Tbがタウ病理の増加と関連している可能性を示唆している。本研究の結果は,体温および脳温の低下とタウの過リン酸化との関連を示す多くの文献に新たな知見を付け加えるものである。

編集委員会・編集後記
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