日本予防理学療法学会雑誌
Online ISSN : 2436-9950
研究論文(原著)
急性期脳卒中者の早期における全身骨格筋量を減少させる因子の検討
小田桐 伶 金子 純一朗浅見 正人高見 彰淑
著者情報
キーワード: 脳卒中, 急性期, 筋肉量
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2025 年 5 巻 1 号 p. 52-58

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Abstract

【目的】急性期脳卒中患者の脳卒中重症度,摂食嚥下機能,日常生活動作レベル,栄養状態の要因が発症2週時までの骨格筋量を低下させる因子になるか検討すること。【方法】対象は急性期脳卒中患者 48 名であった。方法は,体組成計を用いて全身骨格筋量を採取した対象者データと,カルテ情報を採取し,後ろ向き研究を行った。統計解析方法は,従属変数を発症~2 週時の全身骨格筋量の変化量,独立変数を発症時のNIHSS,FIM,Alb値,FILSとした重回帰分析を行った。【結果】NIHSSと交絡因子であるBMIが抽出された(R2=0.21)【結論】急性期における脳卒中者の筋肉量減少脳卒中患者を引き起こす要因として,脳卒中重症度が挙げられたが,寄与率が低く交絡因子も結果に影響を与えていた。今後は,血液データを含めたさらなる調査が必要と思われる。

Translated Abstract

Objective: The purpose of this study was to investigate whether stroke severity, dysphagia, activities of daily living, and nutrition influence muscle mass in patients who experienced an acute stroke.

Methods: This study included 48 patients who experienced an acute stroke. Change in the skeletal muscle mass from the time of stroke occurrence for until 2 weeks were evaluated using a body composition monitor. In addition, changes in the National Institutes of Health Stroke Scale, Food Intake LEVEL Scale, Functional Independence Measure, and Geriatric Nutritional Risk Index findings were extracted from medical record. Multiple regression analysis was performed with change in the skeletal muscle mass as a dependent variable.

Results: National Institutes of Health Stroke Scale was correlated with decreased skeletal muscle mass. Also, BMI, a confounding factor, was correlated (R2 = 0.21).

Conclusion: The severity of strokes may be a factor that decreases muscle mass in stroke patients in the acute phase, but the contribution rate was low and confounding factors also influenced. Further, it is necessary that investigation include blood data.

はじめに

脳卒中者の筋肉量低下は機能予後, 自宅復帰率,入院期間との関連が報告されており14),筋肉量の維持,向上は重要である。また,国内における脳卒中に関連するサルコペニアの有病率は54%であり5),リハビリテーションを行う上で遭遇することの多い病態である。脳卒中に関連するサルコペニアの要因は複数あり,低栄養6),不動・活動量低下7),除神経8),全身性炎症9),異化同化作用の不均衡10)などが報告されている。脳卒中に関連するサルコペニアの兆候は極めて早期から確認されており,発症後4時間後に母指球の運動単位数が減少していることが確認されている11)。運動単位数およびα運動ニューロンの減少は,サルコペニアの重要な要因と考えられており,サルコペニア者の4分の1程度の割合に筋肉量減少を伴う運動ニューロンの減少が見られた12)。上記の報告などから,上位中枢の脱抑制と細胞への栄養の不均衡は,筋肉組織を変性させると考えられている13)。 筋肉量減少が報告されている早期の報告は10日以内であり,脳卒中発症前のサルコペニア発症者は15.8%であったのに対し,発症10日以内には29.5%,発症4週には51.6%と,発症を契機に増加することが報告されている14)

脳卒中に関連するサルコペニアの予防法は未だ確立されてはいないが,栄養管理15),服薬調整16),運動療法17),座りっぱなしの生活の是正18)などを複合的に行う介入が効果的であると考えられている。その中でも運動療法に関して,吉村らは立ち上がり運動19),Fengらは非麻痺側上肢のゴムチューブを使用したレジスタンストレーニングを行うことで20),脳卒中に関連するサルコペニアを減少できることを報告した。レジスタンストレーニングは,筋力強化以外にも身体の代謝系を活性化させ,エネルギー利用効率向上,筋合成促進などの効果がある1920)。また,脳卒中に関連するサルコペニア改善のための運動療法について,専門家の共通認識を確認するためDelpi法を用いて調査した研究では,本人の症状,認知機能,精神状態,バランス能力などを考慮し,必ずしも器具は用いなくても良いが,実現可能かつシンプルな課題を本人の疲労や機能改善に合わせて調整し,漸進的に負荷を上げていくことや,患者教育の必要性などが大多数の共通認識であることが分かった21)。脳卒中に関連するサルコペニアの抑制と改善のために行うリハビリテーションでは,通常の麻痺側肢の積極的使用を促す脳卒中治療に加え,サルコペニア予防を考慮した運動量療法プログラムが必要ではないかと考えるが,発症初期の段階でどの患者にプログラムを追加した方が良いのかについては詳しく調査されてはいない。先行研究では,脳卒中重症度22),嚥下障害23),日常生活活動量低下24),低栄養25)などが退院時の脳卒中に関連するサルコペニアの発症率に影響を与えることが報告されている。しかし,発症より数週で筋肉量減少が観察されているため,発症早期の筋肉量減少を食い止めるためにも,より早期の段階において筋肉量低下を引き起こす者を明らかにすることには意義がある。

そこで,本研究では脳卒中重症度,摂食嚥下機能,日常生活動作レベル,栄養状態が,発症2週時の筋肉量の変化に影響を与えるのかを調査することとした。

対象と方法

対象は,2019年9月~2020年2月の間,弘前脳卒中・リハビリテーションセンターリハビリテーション科の急性期病棟に入院した脳卒中患者の中で,発症時と発症2週時の筋肉量測定を行った連続症例48名(年齢75.5±11.0歳,男性20名・女性28名,身長156.0±9.2cm,体重57.5±12.5kg,BMI 23.6±4.3kg/m2,梗塞35名・出血13名)であった(表1) 。除外対象として,本人または家族より聴取した病前のmodified Rankin Scale Scoreが5点以上の者,ペースメーカー植え込み術を施行した者,認知症や意識障害の影響により数分間体動することなく背臥位を維持できない者,身体欠損のある者,関節拘縮により検査姿勢を取れない者,測定日まで医師よりリハビリテーション介入許可が取れなかった者や,退院などによって2時点での測定ができず,データ欠損のある者を除外した。倫理的配慮に関して,本研究はヘルシンキ宣言に基づいて行われた。被験者の個人情報の保護には十分留意し,被験者にはカルテ上のデータを研究目的で使用する説明を行い,同意を得たうえで実施した。本研究は,弘前脳卒中・リハビリテーションセンター倫理委員会の承認を受けた(承認番号:19B005)。

表1基本属性

属性 平均値
年齢(歳) 75.5±11.0
身長(cm) 156.0±9.2
体重(kg) 57.5±12.5
BMI(kg/m2 23.7±4.3
性別(男/女)(%) 男20名(42%)/女28名(58%)
脳卒中分類(出血/梗塞)(%) 出血13名(27%)/梗塞35名(73%)
病前のmRS 0点:27名,1点:9名,2点:6名

3点: 5名,4点:1名

SMI変化量(kg/m2 −0.2±0.5
SMI変化率(%) −2.3%
mRS,性別,脳卒中分類は人数を記載 SMI: skeletal Muscle Mass Index ,BMI: Body Mass Index, mRS: modified Rankin scale

方法は,筋肉量を背臥位における医療用体組成計(インボディ・ジャパン社製,In Body s10)による生体電気インピーダンス法にて評価した。評価は,発症後 3 日以内の時点と発症 14日 ± 2 日の時点で行った。体重測定は体組成計測日と同日に行った.体組成の計測は昼食後 4~6 時間に実施した。体組成計測によって得られた対象者データより,発症時の骨格筋量指数(skeletal Muscle Mass Index:以下,SMI),発症2週時のSMI,2時点で得られたSMIより変化量と変化率を算出した。SMI変化率は,発症2週時SMI−発症時SMI/発症時SMI×100〔%〕によって算出した。SMIは四肢骨格筋量÷身長の二乗で求められる。その対象者データとカルテ情報を採取し,後ろ向き研究を行った。カルテ情報は基礎情報(年齢,性別,身長,体重,BMI,脳卒中分類(出血,梗塞))の他に,発症時の脳卒中重症度をNational Institutes of Health Stroke Scale(以下,NIHSS),嚥下機能をFood Intake LEVEL Scale (以下,FILS),日常生活動作レベルをFunctional Independence Measure(以下,FIM),栄養状態を血清アルブミン値(以下,Alb値)で評価した。統計解析は,先行研究において関連性があると思われるNIHSS,FILS,FIM,Alb値の中でSMI変化率と相関性を認めたものを独立変数,SMI変化率を従属変数とし,強制投入法による重回帰分析をmodel 1として行った。また,model 1に投入した独立変数に加え,交絡因子となりえる年齢,性別,BMIを投入した重回帰分析をmodel 2とした。ただし,model 2では5つの独立変数を用いて48名に対して重回帰分析を行うこととなる。5つの独立変数を投入した場合,最低限必要なサンプルサイズ50名を下回るが,先行研究を参考に26),model 2ではステップワイズ法による解析を行った。

重回帰分析に先行し,発症時と発症2週時におけるSMI,体脂肪率,BMIの差をShapiro-Wilk testにて正規性を確認した後に,対応のあるt検定にて比較した。また,性別を分け,SMI変化率,発症時SMI,発症時BMI,体脂肪率に正規性を確認した後に差の検定を行った。SMI変化率と独立変数である各指標の相関性は,Shapiro-Wilk testで正規性のある間隔尺度に対してはPearsonの積率相関係数,それ以外にはSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。また,重回帰分析の残差の正規性はDurbin-Watson比,多重共線性は説明変数間の相関行列表により説明変数同士の相関が 0.8未満であることと,分散インフレ係数が2 未満であることで確認した。

統計ソフトはR (4.4.1,Free Software Foundation製) を使用し,有意水準は5%とした。サンプルサイズはG power (3.1.9.7,ハインリッヒ・ハイネ大学)にて効果量0.35 (Large),有意水準5%,検出力80%,説明変数4で検定すると想定したとき40人必要であるということを確認した。

結果

正規性のある間隔尺度は平均値±標準偏差,それ以外は中央値(四分位範囲)を記す。発症時SMIは6.2±1.3,発症2週時SMIは6.0±1.2,SMI変化率は-2.3%であり,発症時SMIと2週時SMIの比較では有意差を認めた(表2)。また,発症時BMIと2週時BMIの比較でも有意差を認めたが,体脂肪率には有意差を認めなかった。性別間の比較では,発症時SMIに有意差を認めた(表3)。Alb値は4.1±0.4g/dl,FILSは7(6-9),FIMは48(27-95),NIHSSは6(3-12)であり,SMI変化率と有意な相関を認めたものはNIHSS(r=−0.34)とFILS(r=0.35)であった(表4)。重回帰分析model 1では,ANOVAにおいて有意性を認め,自由度調整済み決定係数R2=0.16であった。NIHSSに加え,年齢,性別,BMIを投入したmodel 2では,NIHSSとBMIが抽出され,自由度調整済み決定係数R2=0.21であった(表5)。Durbin-Watson比は1.37,説明変数間(NIHSS,BMI)の相関はr=0.09,分散インフレ係数は2以下であり独立変数間には多重共線性がないことを確認した。

表2発症時と2週時のSMI,SMI変化量,SMI変化率,体脂肪率,BMIと2時点におけるt検定

発症時 2週時 p値 効果量(r)
SMI(kg/m2 6.2±1.3 6.0±1.3 p<0.05 0.3
BMI(kg/m2 23.7±4.3 23.2±4.1 p<0.05 0.6
体脂肪率(%) 30.5±9.3 31.1±11.3 n.s.
平均値±標準偏差 SMI: skeletal Muscle Mass Index,BMI: Body mass index,BMI: Body Mass Index

表3性別間におけるSMI変化率,発症時SMI,発症時BMI,体脂肪率の比較

男性 女性 p値 効果量(r)
SMI変化率(%) 2.4 (1.2, 9.0) 3.5 (−2.3, 6.3) n.s.
発症時SMI(kg/m2 7.3 (6.5, 7.3) 5.4 (4.7,5.8) p<0.05 0.66
発症時BMI(kg/m2 24.2±3.4 23.2±5.0 n.s.
発症時体脂肪率(%) 27.7±7.5 32.3±10.3 n.s.
正規性のある間隔尺度は平均値±標準偏差,それ以外は中央値(四分位範囲)を記載。* p<0.05

表4Alb値,FILR,FIM,NIHSSのデータとSMI変化率との相関性

平均または中央値 相関係数 p値
Alb値 4.1±0.4 0.02 p=0.9
FILS 7(6-9) 0.35 p=0.01*
FIM 48(27-95) 0.23 p=0.12
NIHSS 6(3-12) −0.34 p=0.01*
年齢 75.5±11.0 0.06 p=0.7
性別 0.06 p=0.7
BMI 24(21-26) −0.21 p=0.15

正規性のある間隔尺度は平均値±標準偏差,それ以外は中央値(四分位範囲)を記載。* p<0.05

Alb値: Albumin値, FILS: Food Intake LEVEL Scale, BMI: Body mass index

NIHSS: National Institutes of Health Stroke Scale, FIM: Functional Independence Measure

表5重回帰分析の結果

model1 model2
B(95%CI) β 標準

誤差

p値 B(95%CI) β 標準

誤差

p値 VIF
Alb値 −0.014

(−0.35, 0.2)

−0.07 0.027 0.62
NIHSS −0.0042

(−0.008, −0.001)

−0.48 0.0017 0.02* −0.004

(−0.006, −0.002)

−0.45 0.001 0.001* 1.014
FIM −0.0007

(−0.002, 0.0001)

−0.34 0.0004 0.09
FILS 0.007

(−0.005, 0.019)

0.25 0.0059 0.22
BMI −0.005

(−0.009, 0)

−0.26 0.002 0.05* 1.014

B:非標準偏回帰係数,β:標準偏回帰係数,95%CI:95%信頼区間,VIF:分散インフレ係数,* p<0.05

Alb値: Albumin値, FILS: Food Intake LEVEL Scale, BMI: Body mass index

NIHSS: National Institutes of Health Stroke Scale, FIM: Functional Independence Measure

考察

結果より,発症時点においてNIHSS及びBMIの高い者が,筋肉量の低下を引き起こしやすい可能性が示唆された。しかし,寄与率はmodel 1でR2=0.16, model 2でR2=0.21と0.5を下回っており,回帰モデルの精度は不良であった。そのため,全身骨格筋量を減少に関連する交絡因子についても含めて考察する。

SMIは2週間の経過で平均値6.2kg/m2から6.0 kg/m2に有意に減少した。下方らの報告では,SMIは年間において男性で0.28%,女性で0.02%低下する27)。また,SMIの0.2kg/m2の減少というのは男性における60歳代から70歳代へ加齢変化した際と同程度の筋肉量変化であると報告されている27)。上記に加え,脳卒中罹患直後の補液はSMIを過小評価させる可能性がある。先行研究では,591mlの補水はインピーダンス値を上昇させ,SMIを低く推定させる可能性が指摘されている28)。そのため,本研究における発症時の筋肉量は実際よりも低値である可能性がある。また,発症時と発症2週時の比較において,体脂肪率に有意差は見られなかったものの,浮腫等の影響が測定結果に影響を与えた可能性がある。体水分量などの指標での検討も必要であったと思われる。

脳卒中重症度と骨格筋量の低下に関して,先行研究では入院時のNIHSSは退院時のサルコペニア発症の予測因子であり,そのオッズ比は1.2であったことが報告されている22)。そのため,経過が長くなるほど,脳卒中の重症度は骨格筋量に影響を及ぼすと思われる。しかし,本研究のように,急性期時点において脳卒中重症度と骨格筋量との関連を報告した調査はあまり見られない。筋力に関しての先行研究では,脳卒中発症後1週間以内に非麻痺側上下肢に対して筋力低下が生じることが報告がされている29)。また,このような筋力低下は片麻痺による錐体路障害の影響だけでは完全に説明できないとしており,全身における骨格筋の構造的かつ機能的な変化が脳卒中後の筋肉に生じると推測されている30)。骨格筋量を調査した著者の研究では,中等度運動麻痺群と軽度運動麻痺群の2群に分類し,脳卒中発症時,発症後2週,発症後4週,発症後8週と経時的に比較した際には,両群のSMIに有意差は見られなかった31)。これらの知見より,運動麻痺は発症早期から筋力に影響を与え,筋肉組織の構造を変性させるが,運動麻痺が重度であるほど骨格筋量が減少しやすいとは言い難いように思われる。NIHSSは意識レベル,注視,視野,顔面神経麻痺,運動麻痺,運動失調,感覚,言語機能,構音障害,注意機能を評価する指標であり,運動麻痺以外にも様々な評価がされる32)。本研究ではSMI変化率とFILSとの間に弱い相関(r=0.35)を認めたことを踏まえると,NIHSSが高く,意識障害,構音障害を伴う摂食嚥下機能障害,注意障害等の症状によって食事・栄養補給に影響が出た場合,急性期においても骨格筋量が減少しやすくなる可能性が考えられた。あるいは,NIHSSと誤嚥性肺炎の罹患率には相関があるため33),NIHSSが高値の者は,誤嚥性肺炎等で引き起こされる全身性炎症による消耗の影響を受けやすい可能性がある。誤嚥性肺炎等のイベントがなかったとしても,飢餓,侵襲,重症時には炎症性サイトカインが上昇し,タンパク質分解が促進することで免疫機能を強める働きがあることが報告されている3436)。本研究では,詳細な生化学データを抽出していないため,推察に留まるが,発症早期に脳卒中重症度が高い者ほど炎症性サイトカインが上昇し,タンパク質分解が促進される可能性が考えられる。脳卒中発症初期の筋肉量低下を引き起こす要因に関しては,生化学データを踏まえたさらなる調査が必要である。

model 2ではBMIが抽出された。先行研究では,肥満者のように栄養状態が良好な者は,脳卒中を含む諸疾患の発症後に,脂肪を免疫機能向上のためのエネルギーとして利用し,死亡率や身体機能低下が抑えられると報告されており,脂肪組織の分解が促進し,骨格筋の分解は抑制される10)。また,別の研究では,脳卒中者の一部には脂肪と除脂肪組織が減少することが報告されている37)。本研究では,発症時と発症2週時の比較において,BMIに有意差を認めたが,体脂肪率に有意差は認めなかった。重回帰分析の結果から,体重の減少とともに骨格筋量が減少したため,初期のBMIが抽出されたと思われる。

回帰式モデルの精度が不良である原因として,骨格筋量減少が入院中の活動量,投薬の影響を受けている可能性が考えられる。急性期脳卒中患者の平均活動時間は40分と極端に短く筋肉量を減少させる要因であるが38),レジスタンストレーニング等の介入を受けた者はタンパク質合成が改善し,筋肉量が増加するため1920),日常生活時やリハビリテーション時の運動量,運動内容が研究結果に影響を与えた可能性がある。本研究ではFIMによって身体活動量の一部を説明できると仮説を立てたが,2週間の間で自立度が変化する者も多く存在したため,発症時のFIMでは推定困難であったと思われる。投薬に関して,サルコペニアを抑える効果があるとされている脳保護剤や降圧剤の一部が対象者に投与されていたため,筋肉量低下を抑制させた可能性がある39)

本研究の限界点として,急性期脳卒中者を対象としているため,点滴加療中の者が多いことや排尿障害などの影響により,体組成計測の前に全対象者が排泄を済ませるなどの体液の調整ができていないため,体組成計の測定値に影響を与えている可能性がある。また,サンプルサイズの問題で,脳卒中分類などの要因を分けて検討することができなかったことが挙げられる。

結論

急性期における脳卒中者の筋肉量減少脳卒中患者を引き起こす要因として,NIHSSとBMIの高い者が挙げられた。しかし,寄与率はR2=0.21と低いため,予測の精度が低いことが分かった。生化学データの追加や,サンプルサイズを増やしたさらなる調査が必要である。

利益相反

本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項は存在しない。

References
 
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