理学療法の臨床と研究
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学術助成研究
T 字杖の長さが変形性膝関節症患者の膝関節への力学的負荷に与える影響
日當 泰彦島田 昇平田 和彦河江 敏広松木 良介雁瀬 明伊藤 亮平八木 秀樹村田 修一伊藤 義広木村 浩彰越智 光夫
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2013 年 22 巻 p. 3-6

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抄録
「目的」内側型膝OA における膝関節運動力学的負荷の指標として外部膝関節内反モーメントとlateral thrust があり,内側型膝OA の発症・進行を予防するためにこれらを軽減することが重要である。T 字杖の効果として,免荷や疼痛緩和,バランス改善に加え,運動力学的負荷を軽減させることも報告されている。外部膝関節内反モーメントとlateral thrust に対するT 字杖の効果について,独歩とT 字杖を比較した報告は散見されるが,T 字杖の長さの影響に関する報告はない。そこで,本研究の目的は,内側型膝OA 患者に対し独歩と3 段階に長さを規定したT 字杖歩行の4 条件を比較し,外部膝関節内反モーメントとlateral thrust に与える影響について検討した。「方法」対象は内側型膝OAと診断され,手術適応となった術前9名9膝(男性3名,女性6名)とした。平均年齢は66.9 ± 7.6歳,Kellgren-Lawrence分類はⅡ:1名,Ⅲ:3名,Ⅳ:5名であった。歩行動作の評価は,三次元動作解析装置と4枚の床反力計を用いて測定した。運動課題は,8mの快適速度歩行とし,1)独歩,2)T字杖歩行(a.肘関節完全伸展位,b.肘関節30°屈曲位,c.肘関節90°屈曲位)の4条件で測定した。測定項目は,最大外部膝関節内反モーメント,lateral thrust,床反力,身体重心から膝関節中心の距離,歩行速度とした。統計処理は,一元配置分散分析を用い,有意水準は5%未満とした。「結果」すべての測定項目において,独歩と3段階のT字杖歩行の4条件間に有意差を認めなかった。「結論」有意差を認めなかった要因として,過去の報告と比較して,サンプルサイズが小さく,杖歩行の習熟度の低さや,対象の力学的特性の違いが考えられた。今後,サンプルサイズを増やし,また対象の特性を揃えて検討していくことで,本研究を発展させていきたい。
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© 2013 公益社団法人 広島県理学療法士会
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