抄録
γ線照射が生そばの生地物性及びテクスチャーに及ぼす影響について検討した。また, 照射そば粉の製麺適性を明らかにするため, いくつかの製麺条件下で製麺した生そばについて, そば生地の物性測定及びゆでそばの官能評価などを行い, 以下の結果を得た。
(1)照射生そばの生地物性は, 0.2Mrad以下の線量の照射においては非照射そば生地の特性値とほぼ同等であった。また, ゆでそばの官能的なテクスチャーは, 照射することによって軟らかくて脆く, また齒に粘着するようになると評価されたが, 0.2Mrad以下の線量ではその影響はわずかであった。
(2)γ線照射そば粉は, 25%の低加水で製麺した場合ミキシング及び圧延時に製麺性が悪かった。このことは, ファリノグラフ試験においても最大トルクの低下及び最大トルク到達時間の変化となって現れた。この原因の一つとしてそば粉中の水溶性粘質がγ線照射によって変化したものと推察した。
(3)生そばの生地物性は,そば粉配合割合及び加水量などの製麺条件によって変動した。しかし, 原料そば粉に対するγ線照射は, 線量が0.5Mrad程度までであれば他の製麺条件に比べ生地物性に与える影響は小さかった。しかし, 線量が1.0Mrad程度になると弾性率の増大と最大強度の減少が起こり硬くて脆い生地となる傾向が認められた。また,照射そば粉を用いた麺の官能評価も, 照射生そばの官能評価と同様で非照射品に比べテクスチャーが劣ると評価された。
(4)シェルフライフの延長を目的とし, かつそばの風味やテクスチャーを損なわないγ線照射による実用的なそばの殺菌条件としての照射線量は, 包装麺では0.2~0.4Mrad, そば粉としては0.3~0.5Mradの範囲にあるものと推察された。