食品照射
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報文
  • 菊地 正博
    2016 年 51 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    放射線の高い透過性を利用すると,牛レバーを包装後に生のままで安全に殺菌できると考えられる。これまでに冷蔵状態の照射牛生レバー中のラジカルを電子スピン共鳴法で検出できた。しかし,実用的には冷凍状態で照射されることが考えられるので,照射された冷凍牛生レバーについて様々な試料調製法を用いてラジカル検出を試みた。予めストローに牛生レバーを詰めて照射した試料のESRスペクトルと,単独で照射したストローのESRスペクトルの差スペクトルから照射応答するピークが見出された。一方,冷凍牛レバーのみを試料管に挿入してESR測定したところ,メインピークとその低磁場側と高磁場側に存在するサイドピークを検出でき,ほぼ直線的な線量応答が確認できた。牛生レバーの凍結乾燥粉末のESR測定ではサイドピークが消失し,ショルダーピークに変化が見られた。冷凍状態で照射した牛生レバーのラジカルが冷凍保存後でも検出可能であるか確認するため,照射後7日間,冷凍保存した牛レバーを流水解凍して検体を作製してESR測定した。その結果,照射誘導ラジカルが検出可能であることが明らかとなり,線量応答性も確認できた。したがって,ESR法は冷凍状態で照射された牛生レバーに対して照射の有無を判別する検知法として利用可能と考えられる。液体窒素温度でのESR法は,牛レバーの解凍から測定まで短時間で実施可能なのでスクリーニング法として有用と考えられる。

Note
  • 亀谷 宏美, 等々力 節子
    2016 年 51 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    大豆は,強いラジカル消去活性を有する安価で栄養価の高い食品で,活性酸素種に関連する疾患を発症する危険性を低減,もしくは疾患の進行を阻害すると考えられている。大豆へのガンマ線照射は,風味に影響を及ぼすことなく,特性を向上させるが,照射された大豆のラジカル消去活性について詳細な研究されていない。そこで,本研究では,電子スピン共鳴(ESR)スピントラップにより,各ラジカル種に対する大豆水抽出物のラジカル消去活性について調べた。その結果,大豆に照射する線量が増加すると,一重項酸素消去活性は増加,スーパーオキシドラジカル消去活性は減少した。しかし,ヒドロキシルラジカル,アルコキシラジカル消去活性は,照射と非照射大豆で有意差は認められなかった。さらに,照射と非照射大豆は,ORACでも有意差は認められなかった。本研究結果により,ガンマ線照射は,大豆の水抽出物が有するスーパーオキシドラジカルおよび一重項酸素消去活性に影響を与えることが示された。

  • 北川 陽子, 起橋 雅浩, 高取 聡, 福井 直樹, 梶村 計志, 尾花 裕孝, 古田 雅一
    2016 年 51 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    2-アルキルシクロブタノン(ACBs)は,放射線照射により食品中に含まれる脂肪酸から特異的に生じるため,食品の照射履歴の検知指標として有用な物質である。我々はこれまでに常温保存下でのACBsの安定性を評価することを目的として,レトルト包装された牛丼の具(レトルト牛丼)中に生成した2-ドデシルシクロブタノン(DCB)および2-テトラデシルシクロブタノン(TCB)の濃度を追跡し,照射後1年を経過してもACB濃度に大きな変化がないことを報告した。本研究では,さらに保存期間を3年に延長し,常温保存した照射レトルト牛丼中のDCBおよびTCB濃度を測定した。また,照射後0か月の試料を3年冷凍保存し,冷凍保存条件でのACBsの安定性についてもあわせて検討した。その結果,常温保存試料は,冷凍保存試料と比較して,脂質の劣化に由来すると考えられる夾雑ピークが多数認められた。しかし,保存条件に関わらず,照射後3年を経過しても照射レトルト牛丼中に生成したACBsは安定であり,照射履歴の検知は可能であった。

総説
  • 千葉 悦子, 飯塚 友子, 市川 まりこ, 鵜飼 光子, 菊地 正博, 小林 泰彦
    2016 年 51 巻 1 号 p. 23-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    「香辛料は,照射殺菌に比べて過熱水蒸気殺菌では香りが減少し色調が変化する」ことを,官能検査により種々の条件で確かめた。加熱調理のカレーであっても,照射殺菌品は過熱水蒸気殺菌品より「試食前の香り」や「試食しての辛味」が統計的な有意差を伴い強かった。料理でなく香辛料自体で比較し,赤唐辛子,白・黒コショウは,照射殺菌品の方が,風味や辛味がより強い傾向であった。さらに,赤唐辛子やターメリックの過熱水蒸気殺菌品は,未処理品との色の違いが非常に大きく,照射品は小さかった。そこで,色と風味の比較を2次元マップに表すと,照射品は未処理品に近いことが一目瞭然で,放射線殺菌の長所が納得しやすく,リスクコミュニケーション推進に効果的であると分かった。また,香辛料は水に浮沈するので,香辛料の量を厳密に揃える比較には,香辛料の分散が必要と分かった。それには,ポタージュや介護用とろみ剤が有効であろう。とろみ剤を水に溶かして香辛料を分散させると,白コショウの辛味は,統計的な有意差を伴い,照射殺菌品の方が過熱水蒸気殺菌品より強かった。ただし,照射品の風味の方が好まれるとは限らず,風味は強弱だけでなく質的な違いも感知される場合があると考えられた。

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