食品照射
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カナダのジャガイモ照射プラント
梅田 圭司
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1971 年 5 巻 2 号 p. 13-18

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抄録

カナダでは1960年に照射ジャガイモの食用が許可されたが, この時の吸収線量は最高10Kradでは大容積の照射箱を使用すると照射不足のジャガイモも多くなるので, 1963年には最高吸収線量15Kradと改められた。1965年には世界で初めての食品照射企業としてNewfieldProducto Ltd. が設立し, そのジャガイモ照射プラントがQuebec州Montrealに建設された。
Newfield Products社は翌年倒産したが, その理由は照射プラントまたは照射処理そのもののトラブルではなく, 例年にない長雨のために収穫時のジャガイモの品質が著しく悪かったための不測の事態によると言われている。もともとカナダのジャガイモ供給は, 日本の場合とはかなり事情を異にしている。日本では量は少ないが秋植ジャガイモあり, 全国的にみたジャガイモの収穫期は4月から12月までで, ほんとうの端境期は1~3月までの4カ月とみて良い。つまりこの4カ月間の供給用ジャガイモの貯蔵が問題になるわけである。これに対しカナダでは, ほんとうの意味での収穫期はせいぜい9~10月の3カ月で, 端境期は長過ぎるわけである。そこで年間少なぐても3ヵ月はアメリカからの輸入ジャガイモに頼らざるをえない。
Newfield Products社の目指したものは, 照射ジャガイモによる年間供給であったわけで, 最高8~9カ月貯蔵しなければならない。発芽防止だけではなく, 腐敗を防ぎながら長期貯蔵するためには, 健全粒の選抜が第1で, 無傷でかつキュアリング処理が必要であろう。この様な事情がありながら, 操業開始の年に収穫時の長雨のため表皮が柔かく, かつ傷の多い原料しか得られなかったことはまったく不幸なことであった。
Newfield Products社の照射プラントは, 現在カナダ原子力公社 (Atamic Energy of Canada Ltd.) に所属し, デモンストレーション用として使用されているそうである。ここでは, 上記のジャガイモ専用照射プラントを紹介し, 今後の参考に供したい。

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© 日本食品照射研究協議会
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