家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
過排卵ラット卵子の形態的研究II.性腺刺激ホルモン投与後の卵子の成熟と排卵時期について
石橋 功
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1967 年 13 巻 3 号 p. 109-114

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抄録

人工昼夜の条件下に飼育した成熟ラットに,PMSおよびHCGを投与して,HCG投与後種々の時間に殺した。卵管をさいて排卵数をしらべると共に,卵巣は固定,染色して細胞学的観察を行ない,卵子の成熟と排卵の時期について検討した。
1.無処置のラットを入工の夜の開始後8~81/2, 91/2~101/2, 111/2~141/2時間で殺したとき,排卵数はそれぞれ9.4, 10.4, 10.9コであった。
2.HCG 25iuを投与して,投与後10(夜の開始後6時間),12(8), 14(10), 16(12)時間で殺したとき,排卵数はそれぞれ2.7, 9.0, 10.6, 11.0コであり,成熟を開始している卵巣内卵子数は,10.7, 4.4, 3.1, 2.1コであった。このことから,HCG処置ラットの卵子の成熟と排卵は,HCG投与後12時間(夜の開始後8時間)で殆ど完了するものと考えられる。
3.HCG処置の場合と同様の時期にHCG 50iuを投与,さらに54時間前にPMS 50iuを投与して過排卵を誘起し,HCG注射後10(夜の開始後6時間),12(8), 14(10), 16(12), 18(14)時間後殺したとき,排卵数はそれぞれ1.0, 8.5, 19.2, 35.6, 46.9コであった。またこれらの時期における発育を開始している卵巣内卵子数は,それぞれ49.5, 41.7, 24.7, 7.1, 1.6コであり,10時間では47.3%(23.4コ)がtelophase Iに,12および14時間では,それぞれ82.7%(34.5コ)および87.9%(21.7コ)がmetaphase IIにあった。これらの事実から,過排卵処置ラットの排卵の時期は,無処置やHCG処置の場合よりやや遅れて,HCG投与後16時間で約80%,18時間でほぼ完了するものと考えられる。
4.HCG処置,過排卵処置いずれの場合においても,成熟階梯の遅れていると思われる若干の卵子が観察されたが,組織学的所見よりして,これらの相当部分は排卵に至ることなく退化するであろうと考えられた。

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