家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
妊娠ラットの胎見除去後の胎盤とガラス玉の排出について
林 正利
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1970 年 16 巻 1 号 p. 33-35

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抄録

胎児の代りにガラス玉を挿入したラットの胎盤は先に実験した胎児除去後の胎盤が正常分娩時期中に99%~100%排出したのに比べて73%の排出率であった。しかしながら,発情の回帰した日の剖検では99%の排出率であった。この胎盤の娩出遅延は,先に記述したように胎児除去後ガラス玉を挿入しなかった実験で99%~100%の胎盤が正常分娩時期中に排出していることから多分挿入したガラス玉の圧迫によるものと考えられる。
発情の出現はガラス玉を挿入しなかった先の実験では胎盤娩出後1日~2日に起こっており,胎盤の存在する場合は発情の出現がなかった。他方,ガラス玉を挿入した今回の実験では発情の回帰が遅かった。反対にガラス玉のみ存在するときは発情の回帰が4日~5日目に認められた。これは子宮内異物が性周期に影響を及ぼさないというECKTEIN, KELLYら7)およびDoYLE & MARCTOLIS8)の報告と一致している。
NEWTON9)はマウスについて研究し,胎児除去後の胎盤が正常妊娠期間中子宮に残存し,満期で娩出したことを報告しているが,ガラス玉挿入の実験は行なっていない。
今回の実験では胎盤の存在するときはガラス玉の排出がほとんど起こったが,胎盤を除去したラットではガラス玉の排出はほとんど起こっていないので,恐らくガラス玉の排出には胎盤の存在が必要なものと思われる。
以上のことは胎盤は分娩機構に重要な役割をもつということおよびガラス玉による子宮膨脹は分娩機序に関係が少ないことを示すものであろう。

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