家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
16 巻, 1 号
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  • 森 純一
    1970 年 16 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1970/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    性腺刺激ホルモンを動物に反復投与すると, その生物学的反応が次第に低下する傾向のあることは一般的によく知られていることである。これは投与したホルモンによって動物体内にホルモン作用を妨げる中和物質が産生されたためと考えられ, この物質をCoLLIPはantihor-moneと名づけた。
    このantihormoneの正体については恐らくホルモンに対する抗体であろうとの推察が行なわていたが, 初期の研究では直接これを証明することができなかった。しかし, 近年蛋白精製法の著しい進歩に加えて高性能の免疫賦活剤 (adjuvant) が開発されたことなどによって,抗体価の高い免疫血清を作製することが可能となり, それぞれのホルモンに対するantihormoneの存在が詳細に証明されるとともに, ホルモンに関する免疫血清学的研究は著しく進歩してきた。すなわち, ホルモン抗体の応用によるimmunoassayの開発や内分泌疾患の解明などの研究が数多く試みられるようになり, とくに絨毛性性腺刺激ホルモン (HCG) における婦人の妊娠診断やインシュリン, 生長ホルモン (GH) などの力価判定に広く実用化されるに至った。
    一方, 家畜の性腺刺激ホルモンに関するこれらの報告はまだ数も少なく, 研究も緒についたばかりである。幸い, 最近NIHなどで比較的純度の高い下垂体ホルモン標品が生産され, その入手が可能になったので, この性腺刺激ホルモンを用いて免疫血清学的研究ができるようになった。筆者らはこれまで性腺刺激ホルモンである卵胞刺激ホルモン (FSH) と黄体形成ホルモン (LH) についての研究を行なってきたが, FSHについては抗原性が低いためにまだ検討すべき種々の問題が残されている現状である。本報告はLHについてこれまでに行なわれた実験の結果をとりまとめたもので, その内容は1.牛のLHのimmunoassayとII. 牛LH免疫血清によるLHの生物学的作用の抑制に関する成績である。
  • 宮川 準平
    1970 年 16 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1970/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    卵巣に障害があるため不受胎と思われた牛に対しイソジソ液を子宮内に注入した。その結果,微弱ではあるが発情周期が一応存在していると考えられる機能減退のものでは,性周期に影響を及ぼす傾向が認められ,また黄体のあるものの方が反応し易く性周期短縮の傾向がみられた。また処置以前より発情徴候も改善された。また処置以前より発情徴候も改善された。
    また卵巣のう腫でも所見の変化がみられたものがあり,それらに引続き正常発情が出現した。これらのものはその後の授精により比較的順調に受胎したが,反応がみられなかったものは予後も長引くものが多かった。
  • III.成熟ラットの受精と着床について
    石橋 功, 田中 宏, 高橋 紀代志
    1970 年 16 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 1970/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    人工昼夜の条件下で飼育した成熟ラット433匹に性腺刺激ホルモンを投与して過排卵を誘起し,卵子の生活能力保有時間,受精および着床について検討を行なった。
    1. PMS30I.U.+HCG50I.U.の投与により過排卵を誘起した卵子の生活力保有時間を,第2極体が形成されるか否かによってしらべた。排卵後12(HCG注射後24時間),15(27),18(30),21(33),24(36)時間に冷刺激を与えた場合,第2極体を形成した卵子の比率は,それぞれ94.2,94.0,86.8,60.2,33.7%であった。このことから,過排卵ラット卵子は無処置の卵子とほぼ等しい時間生活力を保有しつづけるものと考えられる。
    2. HCG25 I.U.,PMS30I.U+HCG50I.U..,PMS50I.U.+HCG50I.U.を投与して交配し,6時間後における精子侵入率は75.8(257/337),49.4(496/1005),47.2%(727/1541卵子)であった。精子頭部が卵原形質内にあったものは,それぞれ54.0,28.0,24.6%であり,第2極体を形成している卵子の割合は精子侵入卵子の44.0,28.4,27.8%であった。この結果を無処置の場合の精子侵入率68.8%(220/320卵子),精子頭部が卵原形質内にあるもの39.4%,第2極体を形成している卵子は精子侵入卵子の38.2%であるのに比較すれば,過排卵ラット卵子の受精は,その進行において僅かに遅滞しているように見える。しかしながら,過排卵ラット卵子の排卵完了時間は若干時間遅れ,かつ本結果は6時間後の観察であるので,この成績でもって受精率が低いとはいえない。
    3. HCG25I.U.,HCG50I.U.,PMS10I.U.+HCG25I.U.,PMS10I.U.+HCG50I.U.,PMS30I.U.+HCG50I.U.の処置を行なって交配し,9日後における妊娠ラヅトの割合は,84.0(42/50),52.0(26/50),72.0(36/50),60.0(30/50),0%(0/40匹)であり,平均着床数は,11.6(7~17),12.2(10~16),12.3(8~16),11.5(7~16)個であった。無処置の場合の妊娠率は95.2%(40/42匹),着床数は11.8(7~16)個であるので,処置ラットの妊娠率は低く,着床数では差がない。しかしながら,PMSを前処置した場合は排卵数が多いので,排卵数に対する着床数の割合は低いことが推測される。
    4. 着床部の大きさは,無処置が平均5.62mmであるのに対し,処置ラットの場合は5.06~5.31mmでやや小さいようにみえるが,ホルモン処置の影響であるか否かは明らかでない。
  • 三浦 豊彦, 田内 清憲, 今道 友則
    1970 年 16 巻 1 号 p. 20-29
    発行日: 1970/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    妊娠前半期に下垂体を剔出したラットに対して,PMSGが妊娠を維持させることができるかどうかを検討した。
    術時から妊娠前半期の間だけ1日1回PMSGを連続投与し,妊娠20日目相当日に解剖して観察したところ,日量1~10I.U.を投与された妊娠6日目以後に下垂体を剔出した群に,生存胎仔を有する動物がみられた。妊娠7,8日目下垂体剔出群に対して日量5I.U.,妊娠9日目手術群に対して日量10I.U.を投与した場合には,88%の妊娠維持率が得られた。しかしながら,妊娠中に下垂体を剔出して,PMSGによって妊娠が維持される限界の妊娠日数ならびに妊娠維持に有効な投与日量の範囲等を,HCGと比較した場合には,(PMSGは妊娠6日目以後,HCGは妊娠3日目以後の下垂体剔出群に妊娠を維持させることが可能であり,その投与日量は手術時の妊娠日数によって異なるが,PMSG 1~10I.U.,HCG 1/4~120I.U.であった)PMSGの妊娠維持効果は,概してHCGよりも劣っているように思われた。
    なお,estrone単独投与による妊娠維持をも比較検討したが,PMSG投与による妊娠維持はPMSGによって分泌されたestrogenによる作用の他に, PMSGが直接黄体を刺激しているかどうかを明らかにすることはできなかった。
  • I. sex chromatin染色核の局在性
    利部 聡, 星野 忠彦, 菅原 七郎, 竹内 三郎
    1970 年 16 巻 1 号 p. 30-32
    発行日: 1970/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    受精卵の性鑑別を容易にするために,家兎受精卵におけるsex chromatinの出現日令と,存在部位の偏りを調べた。1~4日令の受精卵では,静止核がとらえにくく,sex chromatinが見られなかった。5日令では全体の35.4%の核に,6日令では全体の51.2%の核にsex chromatinがみられた。また,5日令と6日令の受精卵については,卵を4区にわけ,sex chromatinを有する核の割合をみた。5日令ではA区(内細胞塊)とD区(内細胞塊に対する側)との間に有意差がみられた。受精卵の性鑑別には,5日令と6日令のものがよく,5日令では,内細胞塊に対する側の細胞がよい。
  • 林 正利
    1970 年 16 巻 1 号 p. 33-35
    発行日: 1970/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    胎児の代りにガラス玉を挿入したラットの胎盤は先に実験した胎児除去後の胎盤が正常分娩時期中に99%~100%排出したのに比べて73%の排出率であった。しかしながら,発情の回帰した日の剖検では99%の排出率であった。この胎盤の娩出遅延は,先に記述したように胎児除去後ガラス玉を挿入しなかった実験で99%~100%の胎盤が正常分娩時期中に排出していることから多分挿入したガラス玉の圧迫によるものと考えられる。
    発情の出現はガラス玉を挿入しなかった先の実験では胎盤娩出後1日~2日に起こっており,胎盤の存在する場合は発情の出現がなかった。他方,ガラス玉を挿入した今回の実験では発情の回帰が遅かった。反対にガラス玉のみ存在するときは発情の回帰が4日~5日目に認められた。これは子宮内異物が性周期に影響を及ぼさないというECKTEIN, KELLYら7)およびDoYLE & MARCTOLIS8)の報告と一致している。
    NEWTON9)はマウスについて研究し,胎児除去後の胎盤が正常妊娠期間中子宮に残存し,満期で娩出したことを報告しているが,ガラス玉挿入の実験は行なっていない。
    今回の実験では胎盤の存在するときはガラス玉の排出がほとんど起こったが,胎盤を除去したラットではガラス玉の排出はほとんど起こっていないので,恐らくガラス玉の排出には胎盤の存在が必要なものと思われる。
    以上のことは胎盤は分娩機構に重要な役割をもつということおよびガラス玉による子宮膨脹は分娩機序に関係が少ないことを示すものであろう。
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