家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
牛の子宮分泌液に関する研究
VIII 着床前期における雌生殖器組織および 分泌液中の糖と糖アルコールの消長
菅 徹行正木 淳二木嶋 朗博
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1973 年 19 巻 2 号 p. 59-66

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抄録

着床前期の牛子宮における糖質の動態を調べるため,ホルスタイン種雌牛11頭を妊娠20~80日間のあいだに一定間隔で屠殺し,生殖器組織,分泌液,胎水中の糖および糖アルコール濃度をガスクロマトグラフィーにより定量して,次の結果を得た。
1.子宮分泌液中に見られたフラクトース,ソルビトール,グルコースおよびイノシトールを子宮内膜,胎膜尿膜水および羊水中にも検出した。
2.子宮分泌液中のフラクトースおよびソルビトール値は妊娠の経過に伴って同一傾向の消長を示し,妊娠27日令までは高く,また妊角よりも不妊角の方が高値を示した。しかし30日令以後には明らかに低下した。
3.フラクトース,ソルビトール,グルコースの3成分については,尿膜水,尿水中ではフラクトース,妊娠20日令までの胎膜および子宮液中ではソルビトール,子宮内膜組織と妊娠30日以後の子宮液中ではグルコースが主成分であった。
4.子宮角中央部の内膜組織像を調べた結果,小丘領域の上皮は妊娠20日令以前に消失し,小丘間領域の上皮は妊娠30~40日で屠殺した5例中4例で消失していた。また露出した毛細血管層および緻密層内の血管が拡張し血液栄養による供給増加像が認められた。
子宮腺細胞の分泌活性は妊娠40日頃から高まるが,子宮液および内膜組織内における糖および糖アルコール値は増加しなかった。
3.以上の結果は,着床前期の牛子宮から供給される糖質主成分が妊娠27日まではソルビトールであり,その後はグルコースであること,およびこの時期における牛の胚はこれらの糖質を利用できることを示している。
6.妊娠中の頸管および卵管における糖質の分泌は少なかった。

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