家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
PMS単一投与による幼若ラットの排卵に及ぼす日令と体重の影響並びに排卵誘起後の発情回帰について
田谷 一善沢本 二郎笹本 修司
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1974 年 20 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

PMS一回投与により誘起される幼若ラットの排卵に及ぼすラットの日令と発育促進(体重増加)の影響,並びにPMS投与排卵誘起後の発情周期について観察し,以下の結果を得た。
1)幼若ラットの日令ごとに(17~26日令),PMS3IU,10IUおよび30IUを皮下投与し,72時間後に排卵を検索した結果,排卵の開始する日令は,それぞれ21日令,24日令および23日令であり,日令が進むに従い排卵率が上昇したが,PMS 3IU,30IUに比べ10IUでは排卵開始日令が遅く,排卵率も低下した。しかしながら26日令に到るとPMS 3IU,10IU,30IUともに全例排卵し,PMS処置量の差による排卵率には差異が認められなくなった。
2)PMS誘起排卵に及ぼす幼若ラットの発育促進(体重増加)の影響を検討する目的で哺乳数を減らし,幼若ラットの発育を促進させ,PMS一回投与では未だ排卵の開始しない20日令,排卵の開始される21日令,22日令についてPMS 3IUを皮下注射し,72時間後の排卵誘起率を検討した結果,20日令においては体重が増加しても排卵は認められなかったが,21日令および22日令においては,発育良好な群では対照群に比べ排卵率は上昇した。しかしながら23日令に到れば体重とは無関係にほぼ全例が排卵した。
3)幼若時におけるPMS一回投与がその後の発情周期に及ぼす影響を検討する目的で,25日令にPMS 3IU,10IUあるいは30IUを一回皮下注射し,その後の腔開口,第1回腟発情,第2回腟発情を観察した結果,無処置対照群においては,それぞれ,36.8±0.3日令,37.7±0.4日令,45.1±0.5日令であった。これに対し,PMS投与群においては膣開口,第1回腟発情ともに28~29日令と促進されたが,第2回膣発情が対照群に比べ著しく促進されたのはPMS 3IU処置群のみであった(38.6±0.7)。しかしながら第1回腔発情から9日を要した。
以上の成績からPMS一回注射による幼若ラットの排卵誘起には,体重よりも日令が大きく影響しているものと考えられる。またPMS 3IU処置により第2回腟発情が促進されたのは,PMS処置により一過性に分泌された卵巣の性ステロイド,主として卵胞ホルモンが視床下部一下垂体系の機能的発達を促進したものと推察される。

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