家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
20 巻, 1 号
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  • 田谷 一善, 沢本 二郎, 笹本 修司
    1974 年 20 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1974/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    PMS一回投与により誘起される幼若ラットの排卵に及ぼすラットの日令と発育促進(体重増加)の影響,並びにPMS投与排卵誘起後の発情周期について観察し,以下の結果を得た。
    1)幼若ラットの日令ごとに(17~26日令),PMS3IU,10IUおよび30IUを皮下投与し,72時間後に排卵を検索した結果,排卵の開始する日令は,それぞれ21日令,24日令および23日令であり,日令が進むに従い排卵率が上昇したが,PMS 3IU,30IUに比べ10IUでは排卵開始日令が遅く,排卵率も低下した。しかしながら26日令に到るとPMS 3IU,10IU,30IUともに全例排卵し,PMS処置量の差による排卵率には差異が認められなくなった。
    2)PMS誘起排卵に及ぼす幼若ラットの発育促進(体重増加)の影響を検討する目的で哺乳数を減らし,幼若ラットの発育を促進させ,PMS一回投与では未だ排卵の開始しない20日令,排卵の開始される21日令,22日令についてPMS 3IUを皮下注射し,72時間後の排卵誘起率を検討した結果,20日令においては体重が増加しても排卵は認められなかったが,21日令および22日令においては,発育良好な群では対照群に比べ排卵率は上昇した。しかしながら23日令に到れば体重とは無関係にほぼ全例が排卵した。
    3)幼若時におけるPMS一回投与がその後の発情周期に及ぼす影響を検討する目的で,25日令にPMS 3IU,10IUあるいは30IUを一回皮下注射し,その後の腔開口,第1回腟発情,第2回腟発情を観察した結果,無処置対照群においては,それぞれ,36.8±0.3日令,37.7±0.4日令,45.1±0.5日令であった。これに対し,PMS投与群においては膣開口,第1回腟発情ともに28~29日令と促進されたが,第2回膣発情が対照群に比べ著しく促進されたのはPMS 3IU処置群のみであった(38.6±0.7)。しかしながら第1回腔発情から9日を要した。
    以上の成績からPMS一回注射による幼若ラットの排卵誘起には,体重よりも日令が大きく影響しているものと考えられる。またPMS 3IU処置により第2回腟発情が促進されたのは,PMS処置により一過性に分泌された卵巣の性ステロイド,主として卵胞ホルモンが視床下部一下垂体系の機能的発達を促進したものと推察される。
  • X.アルドースリダクターゼおよびケトースリダクターゼの子宮内膜,絨毛膜および胎盤における分布と消長
    菅 徹行, 正木 淳二, 蒔田 秀夫
    1974 年 20 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 1974/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    牛子宮29例について,子宮内膜,絨毛膜および胎盤中のアルドースリダクターゼおよびケトースリダクターゼ活性を測定し,性周期と妊娠期における消長を調べて,以下の結果を得た。
    1.アルドースリダクターゼおよびケトースリダクターゼ活性が性周期および妊娠期の子宮内膜ならびに絨毛膜中で検出された。
    2.アルドースリダクターゼ活性は発情期と黄体初期の子宮内膜で高く,黄体中期,同末期および妊娠期には低かった。黄体初期における子宮内膜中アルドースリダクターゼ活性値のピークと子宮液中のソルビトール濃度の急増とは時期的に一致したが,発情期にみられたアルドースリダクターゼ活性値のピークとソルビトール産生の間には関連が認められなかった。絨毛膜中のアルドースリダクターゼ活性は妊娠日数の増加に伴って高くなる傾向が認められた。
    3.ヶトースリダクターゼ活性は子宮内膜上皮,子宮腺上皮,小丘頂上部および絨毛膜の栄養膜部で検出され,酵素活性は絨毛膜中の方が子宮内膜中よりも高かった。牛絨毛膜にはソルビトールからフラクトースへの転換能があることが,糖のガスクロマトグラフィーによって確かめられた。
    4.牛の子宮内膜および絨毛膜中におけるケトースリダクターゼとアルドースリダクターゼの活性値あるいは組織化学的所見から,子宮乳中のソルビトールは黄体初期(発情後約4~6日)に子宮内膜で生成され,胚子期の絨毛膜中でフラクトースに転換されることが示された。
  • 石田 一夫
    1974 年 20 巻 1 号 p. 15-17
    発行日: 1974/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    排卵直後から着床直前までのハムスターの卵子について, alcian blue染色を用いてAPSを検出した。 APSは卵子の細胞質には含まれていなかったが,透明帯には多量に含まれており,これはblastocyst期において若干減少の傾向を示した。さらに, APSは8細胞卵子のperivitelline spaceに分割球の表面に付着した状態で出現し,着床直前の透明帯を失ったblastocystにおいてもtrophoblast層に付着して認められた。なお, perivitelline spaceに出現したこれらのAPSの起源と生理的意義について,若干の検討が加えられた。
  • 番場 公雄, 飯田 勲
    1974 年 20 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 1974/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    家畜の中でも豚の精漿中には特に多くのCO2が貯留されている。本実験ではこの貯留CO2が振盪や加温によってどのような影響を受けるか,また, 2貯留量とpHや, Na, Kイオン含量との関連性について調べた。得られた結果を要約すると次の通りである。
    1.加温や振盪操作により貯留CO2の一部が放出されるが,特に振盪によって放出は急激に促進された。
    2. 振盪を開始してから約5分間は, CO2放出が特に激しく起こった。 3mlの精漿を37°Cで振盪した場合の最初の5分間には95μlのCO2放出が認められた。
    3. 静置状態におけるCO2放出は徐々に起こり60分間以上続いた。
    4. CO2放出に伴って,精漿pHはアルカリ側に傾いた。
    5. pHが6.2~7.8のリン酸緩衝液の添加はCO2放出を促進した。
    6. 精漿のpHと貯留CO2量,あるいはNa, Kイオン含量との間には,正の相関関係が認められた。
  • 小笠 晃, 横木 勇逸
    1974 年 20 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 1974/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    下垂体摘出幼若雄ラットを用いて定められている前立腺単位(Pr. U)標示のHCG, PMSGおよびtesto-steroneを下垂体摘出成熟雄ラットに投与して,これらホルモンの精子形成に対する作用の差異を比較検討した。
    前立腺腹葉重量増加反応において,HCG 2 Pr.U(0.4MU),3 Pr. U, 6 Pr. U, 12 Pr.U,はPMSG 3 Pr.U (2IU),5Pr. U, 6 Pr. U, 8 Pr. Uにそれぞれ一致した。これら両ホルモンが互いに符合する用量間では,精巣および副生殖器官の重量は,それぞれほぼ近似していた。精巣組織所見は,HCG 3 Pr.U と PMSG 5 Pr. U投与群間には有意差を認めなかった。しかし, HCG12Pr.UとPMSG 8 Pr.U投与群を比較すると,HCG投与群の前細糸期精母細胞,ステップ7精子細胞の数が,PMSG投与群のそれよりも有意の増加を示した。また精細管の口径についても,HCG投与群がPMSG投与群のそれよりも優っている。
    これらの成績から,下垂体摘出成熟雄ラットの前立腺腹葉重量を指標としてホルモンの力価を定めた場合,HCGの精子形成作用はこれと等力価のPMSGのそれに比べて僅かに優っていることを認めた。
    さらに,これら両ホルモンとtestosteroneの精子形成作用を比較すると,testosteroneがもっとも劣っていた。
  • 渡辺 守之, 佐藤 利和, 寺田 隆登, 岡田 育穂
    1974 年 20 巻 1 号 p. 32-34
    発行日: 1974/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    家禽精子の凍結過程において予凍時間を必要とする機序については明らかにされていない。著者らはあひる精液を用いchromel-alumel熱電対により0,1,2,3分および5分の予凍時間に伴う精液試料中の温度変化を調べ,同時に上記の各予凍時間を経て凍結,融解したのち,蘇生精子活力を調べて検討した。その結果予凍時間の長短によって精液の温度変化に明らかな差が見られた。すなわち予凍時間0分の場合,精液の温度は約20秒で-196°Cに急激に下がる。又予凍時間1,2,3分および5分の場合はそれぞれ-11°C,-94°C,-149°Cおよび-180°Cまでゆるやかに下降し,液体窒素につけると同時に-196°Cまで急激に下降した。予凍0,1,2,3分および5分による融解後の各蘇生精子活力はそれぞれ9%,58%,79%,82%および80%( ?? 以上)で予凍0,1分ではその活力は低く,予凍2,3,5分の間には殆ど活力の差異は認められず良好であった。これらのことからあひる精子の凍結過程における予凍時間は2~3分が適当であり5分以上は不必要と思われる。
  • 中原 達夫, 百目鬼 郁男, 金田 義宏, 山内 亮
    1974 年 20 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 1974/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    PGFを牛の子宮内に注入して,この処置が卵巣の活動状態ならびに性周期に及ぼす影響を検討して,次の成績を得た。
    1.排卵後5日ないし16日の黄体期にPGF 0.5mgあるいは1.0mg(蒸留水0.5mlに溶解)を連日2回,3mgあるいは4mg(蒸留水0.75mlに溶解)を1回,黄体の存在する卵巣と同側の子宮角に注入すると黄体は急激に退行して,これに伴って新たな卵胞の発育が起こり,処置後4日ないし6日に排卵することを認めた。
    2.排卵後2日ないし4日までの黄体初期の早い時期に同様の処置を行なうと,このような顕著な黄体の退行はみられなかった。排卵は処置後8日ないし22日におこって性周期は変化しないかあるいは若干短縮した。処置後の黄体は,正常性周期におけるそれとほぼ同じ消長型を示すものもあったが,大多数は一時萎縮するが再び発育を開始して正常性周期とほぼ同期間存続するもの,発育が一時停滞あるいは継続した後に早期に退行するもの,一時萎縮して再び発育を開始するか結局早期に退行するものなどの変化型を示した。
    3.黄体の存在する卵巣と反対側の子宮角に蒸留水0.5mlに溶解したPGF6mgを注入すると,処置後平均6.0日に排卵したが,6mg,8mgおよび10mgを5mlの生理食塩液に溶解して注入すると,平均それぞれ4.3日,4.0日および4.3日後に排卵した。
    4.以上の成績から,牛において排卵後5日ないし16日の黄体期に黄体の存在する卵巣と同側の子宮角に少量のPGFを1回注入することによって,性周期を同調しうる可能性を認めた。
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