家禽精子の凍結過程において予凍時間を必要とする機序については明らかにされていない。著者らはあひる精液を用いchromel-alumel熱電対により0,1,2,3分および5分の予凍時間に伴う精液試料中の温度変化を調べ,同時に上記の各予凍時間を経て凍結,融解したのち,蘇生精子活力を調べて検討した。その結果予凍時間の長短によって精液の温度変化に明らかな差が見られた。すなわち予凍時間0分の場合,精液の温度は約20秒で-196°Cに急激に下がる。又予凍時間1,2,3分および5分の場合はそれぞれ-11°C,-94°C,-149°Cおよび-180°Cまでゆるやかに下降し,液体窒素につけると同時に-196°Cまで急激に下降した。予凍0,1,2,3分および5分による融解後の各蘇生精子活力はそれぞれ9%,58%,79%,82%および80%( ?? 以上)で予凍0,1分ではその活力は低く,予凍2,3,5分の間には殆ど活力の差異は認められず良好であった。これらのことからあひる精子の凍結過程における予凍時間は2~3分が適当であり5分以上は不必要と思われる。