家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
牛におけるヨード溶液子宮内注入の性周期に及ぼす影響
III.末梢血中progesteroneの消長
百目 鬼郁男中原 達夫山内 亮
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1975 年 21 巻 2 号 p. 52-56

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抄録

牛において性周期の各時期にヨード溶液を子宮内に注入して,性周期の変化に伴う末梢血中progesteroneの消長を追求し,子宮粘膜の炎症に起因して産生されると考えられる黄体退行因子の作用発現時期を検討して,次の成績を得た。
1) 黄体初期処置例:排卵後3日に処置した4例の処置時の性周期は9~12日に短縮した。血中progesteroneは処置後2~3日の間は増加したが,3~4日以降に急激に減少し,発情時にはきわめて低値を示した。
2) 黄体開花期処置例:排卵後11日に処置した1例の処置時の性周期は22日で変化はみられなかった。血中progesteroneは処置の翌日(排卵後12日)に最高値を示し,その後8日間高値を保って発情前期に急激に減少した。この血中progesteroneの消長は正常性周期におけるそれと大差はなかった。
3) 黄体後期処置例:排卵後17日あるいは18日に処置した2例の処置時の性周期はそれぞれ29日および27日に延長した。血中progesteroneは処置の翌日から急激に増加して,処置後3~5日(排卵後20~22日)には性周期の全期間を通じて最高値に達し,その後減少した。
4) 性周期の各時期の処置例において処置後の血中progesteroneの消長は触診による黄体の発育あるいは退行変化とほぼ一一致していた。
5) 以上の成績から,子宮粘膜の炎症に起因して産生されると考えられる黄体退行因子が作用を発現する時期は,黄体初期の牛では炎症誘起後3~4日,黄体後期の牛ではこれより若干遅れて5~6日であることが認められた。なお黄体後期の牛では子宮粘膜に炎症を誘起すると黄体機能が一時的に賦活されることが示唆された。

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