家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
牛リピートブリーダーにおける授精前後の末梢血中遊離性ホルモンの消長
百目鬼 郁男中原 達夫山内 亮
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1975 年 21 巻 2 号 p. 57-64

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抄録

牛における性ホルモンの分泌型と不受胎との関連を究明する目的で,農家から導入したリピートブリーダー9頭および正常牛2頭に授精を行ない,10頭は15~28日後に解剖し,1頭は授精後70日まで観察して,胎芽の発育あるいは死滅と血中遊離性ホルモンの消長との関連•を検討した。
1)胎芽の発育,死滅の状態:リピートブリーダー9頭中1頭の子宮内に死亡胎芽を認めたが,他の8頭の子宮内には胎芽あるいはその死滅崩壊を示すものは存在しなかった。正常牛2頭のうち1頭は胎児が正常に発育し,他の1頭は授精後70日まで正常に妊娠を継続した。
2)血中遊離estrogenの消長:発情期におけるestrogen値は,受胎牛では排卵前3~2日に最高値を示し,排卵直後には急激に低下して最低値に達した。いっぽう不受胎牛では最高値に達する時期は1~2日遅れ,半数は排卵日であった。かつ最低値を示す時期は1例を除き排卵後1~3日でかなり遅れた。授精後におけるestrogen値は黄体形成にともなって増加する高estro-gen群,および低値のまま経過する低estrogen群に大別された。正常妊娠牛は後者に属し,死亡胎芽が存在した牛のそれは前者に属した。
3)血中gestagenの消長:発情期におけるgesta-gen値は,受胎牛ならびに不受胎牛6頭においてestrogenのピーク形成時期にほぼ一致して,あるいはこれより若干遅れてピークを形成した。授精後の黄体期におけるgestagen値は,不受胎牛では発情期にピークを形成した6頭では高く,他の2頭では低かった。受胎牛のgestagen値は,正常妊娠牛2頭では妊期の進行とともに増加し高値を維持したが,胎芽が死亡した1頭では低かった。
4)以上の結果から,estrogenおよびgestagenの分泌異常が,排卵前後に生じた場合には受精障害あるいは受精卵の死滅を招き,これが授精後の黄体期に生じた場合には胎芽の早期死滅を招くことが示唆された。

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