家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
犬の繁殖生理に関する研究
VII.受精卵の着床について
筒井 敏彦
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1976 年 22 巻 2 号 p. 44-49

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抄録

開腹手術および雄犬許容開始から排卵時期を推定した21頭について,排卵を基準に種々の時点に1回のみ交配させ,その後,日を追って剖検した。このうち受胎していた17頭について受精卵の着床状態を観察し,つぎの成績が得られた。
1.胞胚の発育状態
排卵後16日では,胞胚は0.6~0.7mmとなり,子宮腔に浮游していた。
排卵後18日では,着床場所が定まり,その腔内に透明帯を有し,胚部には内胚葉の発生した直径1.5mmの胞胚が浮游していた。
排卵後19~20日の胞胚は透明帯が消失し3.0×3.7となり,着床の準備された子宮腔内の2/3を満たし,その内腔に浮游していた。組織学的には,胚部で中胚葉の発生が始まっていた。
排卵後20.5~21.5日で,外観的に着床部子宮角がわずかに太く,胞胚はその部の子宮の形状に合致したレモン形(5.0×6.0mm)を呈し,三胚葉となり子宮間膜付着部とは対側の子宮内膜に接着し,着床を開始していた。
排卵後21.5日で,胚が1.5×6.0mmの長楕円型となって着床が完了していた。
2.排卵および交配から着床までの日数
1)排卵から着床までの日数:排卵前54時間から排卵後48時間までに交配させたものは,排卵から着床までに20.5~21.5日を要しており,排卵後72時間および84時間で交配させたものは22.0日,96時間で22.5日,108時間では23.0日であった。
従って,犬における排卵から着床までの日数は20.5~23.0日の範囲にあると認められた。
2)交配から着床までの日数:排卵54時間前に交配させたものは,交配から着床までに24.0日,24時間前では22.0日,排卵日では21.0日,排卵後,12時間および24時間では20.0日,36時間では19.5日,排卵後72~108時間では18.5~19.0日であった。すなわち,交配から着床までの日数は18.5~24.0日の範囲にあることが認められた。
以上の成績から,犬の受胎可能な交配期間は約7日間と非常に長いが,受精後,着床までの期間は18.5~19.0日とほぼ一定であるものと認められた。

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