家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
鶏の睾上体及び精管の形態学的研究
伊藤 保一郎西田 司一
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1957 年 3 巻 2 号 p. 81-83

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抄録

この実験は,BAILEYが野鳥において主張した,精管膨大部が哺乳類の精嚢腺と相同である,という仮説を鶏について形態学的な検討を主体としたものであるが,尚睾上体の形態学的考察も哺乳類の相当部位との関連において行つたものである。この実験により得られた結果は次の通りである。
1.精管膨大部の上皮細胞の細織学的検索の結果は,鶏においては該部上皮細胞中に分泌顆粒若しくは哺乳類精嚢腺に見られるhallow-like areaなどと類似を示す如き知見は何も得られなかつた。従つてBAILEYの野鳥において認めた精嚢腺に似た組織は鶏においては認められなかつた。
2.本実験に用いた範囲の材料では,男性ホルモンに対する副生殖腺,特に精管膨大部の反応は正常幼雛の10,30,45日令の間では45日令のものに,又去勢若雛においては注射7日後のものに夫々最大の反応が認められた。
3.本実験の結果の検討から,哺乳類に必要な副生殖腺が,鳥類においても亦必要であるとして,膨大部を強いて精嚢腺と相同な器管或は部位と仮定することに疑問がある。
4.睾上体の構造は,睾丸網,輸出小管及び睾上体管の3部より成り,これらは睾丸側より外側へ夫々層をなして存在し,GRAYの報告と全く一致した。
しかし,trypanblue,india inkの注入後に見られた睾上体の色素の摂取態度から,鶏睾上体も或種の哺乳類で認められている様な水分再吸収其の他に関連した部位に分れていると思われる。

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© 日本繁殖生物学会
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