1961 年 7 巻 3 号 p. 116-118
エーテル吸入麻酔下に於ける成熟雄ラットの副性器及びpenisの運動を45分間に亘りin vivoで観察し,この条件下で自発するこれら器官の一連の整調的収縮運動,即ち,射精様運動の発現回数に及ぼすandrogen, estrogen投与の影響,並にこの運動の発現有無を同一個体につき反復し去勢後長時日に亘り追究した。その結果;
1. 射精様運動は正常動物に於けるよりも去勢動物に頻回に発現し,去勢にandrogenを投与したものでは逆に減少する傾向を示した。一方去勢にestrogenを投与した動物ではこの回数は去勢のみに於けるより減少する傾向を示したが, androgen投与に於ける如き著しい減少は認められなかった。
2. この運動は去勢後7日から最長180日に至る同一個体の反復観察期間中,依然として発現するのが認められた。
3. 去勢後30日に至る期間中androgen,を10及び14日間, estrogenを10日間各々連注した動物ではこれらホルモン投与中止後20から最長120日に至る観察期間中射精運動の発現を認めた。
4. 以上の知見から射精様運動の発現回数はandrogen,及びestrogen各々特有の影響を受けるも,その発現機能はこれにより消滅することなく,長期に亘つて体固有の機能として保有されているものと推測された。