家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
ラット副性器の射精運動に関する研究
V. エーテル吸入麻酔下の幼若ラット副性器の運動の観察並びにこの運動に及ぼす去勢及びAndrogen投与の影響
尾川 昭三河辺 鋭治宮前 理哉
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1961 年 7 巻 3 号 p. 119-122

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抄録

4~90日齢に至る各齢のラットを用い,エーテル吸入麻酔下で45分間に亘り副性器及びPenisの運動をin vivoで観察し日齢に伴う運動発現回数の推移並びにこの運動に対する去勢及びAndrogenic hormone投与の影響を追究した。
1) 20日齢より副性器及びPenisの一連の整調的収縮運動が自発した。日齢に伴いこの運動の発現回数が異り20日齢で約半数に各々1回のみ発現し25日齢では急激に増加して平均4.8回を示した。30日齢では若干減少して平均2.7回となり,以後40日齢より90日齢に至る迄各々大体3回平均の発現回数を示した。これらの運動はその各器官の収縮状態のみならず各器官は収縮が移動して行く状態に於いて殆んど成熟ラットで認められた射精様運動に類似し,更に40日齢よりこの運動と共にPenis先端より液状物質の滲出があり60~90日齢では明らかに精液の滲出が認められた。
2) 生後4~33日で去勢を行い30~60日齢で初回の観察を行つたもの17例にすべて運動が発現し,これらの動物中更に20~30日経過後,同一個体で反復観察したもの4例の全部に依然として運動が認められた。
3) 10~20日齢にて去勢し20日齢より10日間methyltestosterone 1mgを連注したもの,及び25~30日齢にて去勢し30日齢より10日間同じくmethyltestosterone注射を行つたものでは後者の1例を除き,他のすべてに運動が現れ,更に後者の動物ではこの観察後直ちにホルモシ投与を中止して20日経過後同一個体で反復観察した結果同様全例に運動を認めた。
4) 以上の知見からこの幼若ラットで認められた生殖器官の運動は成熟ラットで認められる射精様運動の発現機構と同様なもので自発するものであり,この発現機構の完成はAndrogenic hormone有無に関しない体成長に伴う固有の発育に依るものと推論した。又この運動は射精に関する生殖道収縮の基本的neuro-muscular patternに基くもので,従つてこの基本的patternは25日齢迄に完成するものであろうと推察した。

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